「#64 サステナブル経営と人工知能 (4) 経営という思考が内包する諸問題点」で示した7つの問題点に含まれる課題を整理してみます。
まず、第一に、前提として、事実を捉える変数は、これまでの様な、企業の内部で捉えうる既定のもの(内向きのもの)ではなく、企業の外の状況を捉えうる変数と結び付いたもの(外向きのもの)でなければならない という点に注意を払うべきでしょう。
小田原評定ではありませんが、企業の中で取り得るデータをいくら取っても、また、それをもとにいくら議論しても、本当に採用すべき戦略を見つけ出して、適確に[意思決定]することはできません。
マーケティング分野では、STP(Segmentation、Targeting、Positioning)を考えることが主張されていますが、まさに、このSTPによって規定される顧客とその周辺にいる人たちに対して、成し遂げるべきこと(目的)を相手に合わせて設定すること、及び、それに関わる変数を捉えることで、はじめてその企業の目指す戦略、提供すべき価値(目標とする生産性)が定まると言えます。
第二に、多様性や個性が重視される時代にあって、捉えた変数とその値について、論理と論拠の妥当性を明確にして、[意思決定]に結びつけるかが課題となります。
- 理論、モデル、手法、変数に普遍性はなく、ゴールそのものも一意に規定しうる訳ではない。また、データそのものが答えを出してくれる訳でもない。表面化して目に見える事象の奥底に隠された深層の要因を掘り下げて、何が最も適した施策になるか、どの方法を採用すれば施策をうまく実現できるか、理論、モデル、手法、変数を状況に応じて使い分ける必要がある ⇒ 事象をどの様に捉え、どの様に掘り下げ、どんな手を打つべきか、知識を逆引きできるナレッジベース(辞書)が必要である
- 既に知られた知識だけでなく、何よりも、積み重ねた知見、先を見透して描いた将来像を結びつけて導き出される新たな仮説(アブダクション)を創造できることの方が重要である ⇒ 知識を結びつけて、状況に対応した知恵、新たな知識を生み出すナレッジネットワークが必要である
- データを捉える視点の合意形成、共有された意味の形成、[意思決定]プロセスの透明化が不可欠である ⇒ 多様な視点から合意形成しうる透明性を確保した[意思決定]の仕組みが必要である
※[経営][意思決定]等は[思考]という視点で捉えているという意味を持たせて、[ ]をつけて記しています。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一