コスト削減に関わる活動のパフォーマンスとその論点

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経済合理性を追求する活動として捉えるパフォーマンスとその論点、
コスト削減に関わる活動の概念、及び、変動要因

もし、コストが高いとすれば、それはどういうことか

原価が抑えられていない

  • “原価” とは
    • 一般的に原価とは、製造業であれば製造原価、仕入販売業であれば仕入原価として算出される。生産、仕入をしないサービス業では原価は発生しない(その費用は、主に、人件費などとして計上される)。
  • “原価が高い”とは
    • 予定した原価、標準原価よりも高くなっている場合である。また、予定した原価や標準原価辞退が競合他社に比べて高い場合にも当てはまる。
  • “原価が高い” の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 価格競争にさらされた商品に対して「原価が高い」という問題を捉える必要がある。「原価が高い」ということは、直接的には、販売価格が高くなる、または、利益率が悪くなることを意味する。
    • 所定の機能性能、一定の品質を得ながら、原価の低減を測ることで価格競争力を持つことができ、かつ、顧客の増加とともに、ブランド力の強化にもつながる。
    • 高級品を扱う企業では「原価が抑えられていない(原価が高い)」ことを問題にすること自体に意味はない。むしろ、顧客の期待する価値に見合った高級素材であり、匠の技術であるべきである。
  • “原価が抑えられていない” の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 原価意識が希薄になると、製造現場での創意工夫がおろそかになりがちである。価格競争力の低下につながるばかりでなく、新たな発想の原点である現場での活動が惰性的になり、考える習慣を失っていく。
    • 製造に関わる現場部門が、内発的に原価低減に取り組む様になることで、現場を中心にした“考える組織”となり、組織全体として創造的となる。ちょっとした改善へのアイディア創出、技術革新、新たな発想の商品の開発へとつながっていく。
    • 原価低減に取り組むために、安易にリストラ(事業再編、事業売却、人員削減)を行うべきではない。経営者の役割は、現場での原価意識を習慣づけることと、現場の人達が自ら考えて創造的になるように仕組むことである。


販売費、管理費が抑えられていない

  • “販売費、管理費の支出が多い” の捉え方
    • 販売費、管理費が予定よりも高くなっている場合である。仕入原価や製造原価が高い場合ではない(その場合は、“原価が高くついている” となる)。
  • “販売費、管理費(販売費及び一般管理費)” とは
    • 会計上の “販売費及び一般管理費(SGA:selling, general and administrative expenses )” に計上される費用である。
    • このうち、税務処理上の “損金”として扱える費用を経費(税法上、ある事をするのに必要とされる会社が支払う費用:経営費用)として捉える。
    • “販売費及び一般管理費” には、事業部門で管理できない費用(全社で共有する建屋の賃借料や設備の減価償却費、企業広告の広告宣伝費などの配賦分等:共通費)と事業部門で管理できる費用(販売促進費など部門で計画的に投入する費用:部門費)に分類して捉える。
      • 共通費は、経営者及び全社管理部門の責任として、事業部門の活動の促進、効率化と低コスト化の両面から計画的な活動の成果とともに予実績を捉える。事業部門への配賦については、事業部門の業績を圧迫しないこと、特に、ある部門に重く負担させないように公平性を重視して配賦する必要がある。
      • 部門費は、事業部門長の責任として、各事業部門の計画的な活動の成果とともに予実績を捉える。
  • “販売費、管理費の支出が多い”の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 直接的には、営業利益の圧迫につながる。
    • 企業の業績が悪くなると、すぐに経費削減を求めがちである。しかし、本来、常日頃から、価格競争力と利益率(株主や投資家への還元、新規事業への投資と役員や従業員の生活水準の向上を賄いうる利益額の確保)のバランスを取ったコストの適正化に取り組むべきであり、計画的に予算化し実績管理すべきである。
    • 予算策定に際しては、上からの一方的な統制(予算編成方針に基づく統制)ばかりでなく、部門の内発的な活動(事業の発展、売上の拡大、効率化とコスト削減)を促進する仕組みを作る必要がある。特に、経費については、ある程度の決裁を事業部門長や担当部署の裁量に任せる等により、現場での内発的な活動の動機づけにつながる場合がある。
    • 高級品を扱う企業では「販売費、管理費が抑えられていない(販売費、管理費の支出が多い)」ことを問題にすること自体に意味はない。むしろ、顧客の期待する価値に見合った高級感を漂わせる販売促進であるべきである。
  • “販売費、管理費が抑えられていない”の論点(捉え方の軸と筋道)
    • コスト意識が希薄になると、ついつい浪費してしまうものである。直接販売に携わる営業部門、管理部門の経費削減を図らないと、いくら原価を低減しても本業での利益、即ち、営業利益の確保にはつながらない。しかし、それ以上に、安易に値引きしたり、効果のない販売促進活動をしたり、非効率な管理をしたりして、組織全体としての一体感を持った意識を損なうことになる。
    • 直接販売に携わる営業部門、管理部門が内発的にコスト削減に取り組む様になることで、より効率的な営業活動、効率的な管理を考える組織となる。
    • 経費節減に取り組むために、安易に、一律のコストカットを行うべきではない。経営者の役割は、直接販売に携わる営業部門、管理部門が自ら経費削減を習慣づけることと、ひいては自ら考えて創造的になるように仕組むことである。

固定費が抑えられていない

  • “固定費” とは
    • “固定費”には以下の様なものがある。
      • 建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品等に対するリース代、賃借料、減価償却費
      • 上記のうち、原価計算上は、直接製造に関わる設備投資に対する減価償却費について、生産に供している/いないに関わらず不変的に発生する減耗部分、工場の地代、管理的な職員の給与を固定費として計上する
      • 損益分岐点分析上は、“販売費及び一般管理費” に含まれる費用を、費目別に精査(固変区分)する、最小自乗法で近似値として算出する、高低点から簡易的に算出する等によって固定費を求める
  • “固定費が高い”とは
    • 固定費(売上の増減に関わらず、長期的に一定期間、一定の額で発生する費用)が絶対的に高いというよりも、下記の様に相対的に高いことを捉える。
      • 製造原価に占める固定費の割合が高い
      • 固定費(販売数量に関わらず一定額発生する費用、販売数量に伴って増減する不要は変動費という)が高く、損益分岐点売上高を押し上げている
      • 固定比率(自己資本に対する固定資産(土地、建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品等)の割合)が高い
  • “固定費が高い”の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 直接的には、粗利益、営業利益の圧迫につながる。
    • 限界利益(売上高(商品の単価)-変動費(商品一単位当たりの原価))が減少し、且つ、固定費が増大することで、損益分岐点売上高を押し上げる(より一層売上数量を増やさないと利益がでない)。
    • 固定比率が高い(100%超)ということは、固定資産を取得するために負債により賄われていることを意味する。
      • 負債比率(自己資本に対する流動負債と固定負債の割合)が高いということは、企業の経営が負債により賄われており、この場合、流動比率(流動資産に対する流動負債の比率)が低い(100%以下)となると、固定資産を取得するための費用を流動負債で賄わなければならないこと、即ち、債務の支払いが苦しくなることを意味する。
      • 固定負債比率(自己資本に対する支払期限や返済期限が1年を超えて到来する債務や引当金の比率)が高く、即ち、固定負債に依存するところが大きければ、短期的には経営は安定しているが、やがては、返済期限が近づいてくる(流動負債化する)ので、長期的に見た経営の不安要因となる。
  • “固定費が抑えられていない”の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 新たな事業所の設置、設備投資は経営の責任である。
      • 不要な建物の建設、拠点展開、安易な設備投資が企業経営の足枷になることもある。本当に原価低減、経費削減につながる投資とならなければ、製造現場部門、営業部門、管理部門でいくら原価低減、コスト削減をしても徒労になってしまう。
      • 経営の責任として常にスリム経営に取り組まなければ、組織全体としてのコスト削減にはつながらない。ひいては、組織として一体感を持った意識、考える習慣を損なうことになる。
    • 経営が経営の責任としてスリム経営に取り組むことで、製造部門、営業部門、管理部門が内発的にコスト削減に取り組む様になり、組織として一体感を持った意識、考える習慣を損なうことになる。



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