未来社会の発展に向けたビジョンの実現に向けて協創しイノベーションを巻き興していく組織
イノベーションは、元々は経済用語であり、経済成長のための理論です。しかし、社会の発展という視点からすると、ある意味では社会現象であるということもできます。イノベーションが普及していく過程において社会は変化し、変化した社会は新たなイノベーションが巻き興るための土壌となります。すなわち、イノベーションと社会は互いに相関しながら発展していくことになります。
イノベーションに関わる企業は、自らの力でイノベーションを巻き興していく活動を進めるとともに、そのイノベーションによって発展していく社会の変化を捉えて、さらなるイノベーションに挑んでいかなければならないという運命を担っています。この点で、単に新規事業を起こして、短期的に儲けを出していこうという企業とイノベーションを独自の力で興していこうという企業との間に大きな違いが生じます。
イノベーションを巻き興していくには、組織全体としてビジョンの実現のために何ができていなければならないかという目的を、組織にいる一人ひとりが夫々の立場で自ら理解し、社会の変化に即応して相互の行動と調和をとりながら自律して行動していかなければなりません。そのためには、①様々な要因が絡み合って変化していく状況をダイナミックなシステムとして捉えて行動していく思考能力、②未来社会に創造すべき価値を自らデザインし、その実現に向かって行動していく思考能力を高めていくことが求められます。 そして、これらの思考能力こそが 組織のクリエイティビティ と言うことができます。
未来社会の価値を創造する組織の諸要素
独自の力でイノベーションを巻き興していこうという企業と、新規事業を起こして短期的に儲けを出していこうという企業の違いは 価値創造の構図 の違いに如実に現れます。 以下には、その違いを、「未来社会の価値を創造する組織」と「これまでの知見」との対比で示していきます。なお、本来、「これまでの知見」と「新規事業を起こして短期的に儲けを出していこうという組織」を一括りにしてしまうことはできませんが、ここでは、“価値創造の構図” 上では、同様とみなして話しを展開していくことにします。
詳細は 未来社会の価値を創造する組織 を参照下さい。
価値創造の構図を進化させていく組織の仕組み
クリエイティビティを高めて価値創造の構図を進化させていく組織の仕組みを構築していくための方策は以下の3階層となります。
一般的に、殆どの場合は、この第1の階層において、現場で起きる問題の改善といった表面的な改善に終始してしまいます。しかし、現場で起きる問題の改善だけでは解決できない場合も多くあります。そこで、現場で起きる問題の根本原因を追究した対策を講じ、みんなでそれを遵守していこうということになります。これは第2の階層における方策となり、現在の働き方改革でも取り上げられています。
制度化は、問題の発生を未然に防いでいくという効果はありますが、組織の行動を制約するという副作用をともないます。そして、ルールを守っていればよいという発想や、制度を守ることが目的化してしまうという組織の硬直化の原因にもつながっていきます。
そもそも、企業を成長させるため、ひいては、経済を成長させるためには業務の生産性を向上しさえすれば良いという発想、また、業務の中に分け入ることなく一般論として生産性を高めていこうというだけの発想にとどまっているならば、この第1階層、第2階層で働き方を改革すれば良いということになります。
しかし、イノベーションによって企業は成長し経済も成長していきます。そして、イノベーションを興していくためには、既存の業務の生産性を高める思考から創造性を高めていく思考に発想を転換していかなければなりません。そこで、組織のクリエイティビティを高めていくための取り組みが必要になってきます。それが、第3の階層としてのダイナミックに行動する組織の形成という取り組みとなっていきます。
この3層構造の取り組みは、下図の様な構造となります。ここで、第3の階層における方策の根本原理は組織内の多様性(ダイバーシティ)と一体性(インクルージョン)となります。統制によって実現される一様な組織は、経営環境の変化に対して脆いという弱点があり、また、社会全体が多様性を求める状況にあっては、組織の中に多様性を持たせて適応していくことが必要と考えられるからです。そして、多様性のある組織が一丸となって進んでいくための原理が一体性(インクルージョン)であり、一体性を醸成していく仕組みが第3の階層における方策となります。