一人ひとりの問題意識により社会的課題を解決していく社会となる
他人の苦しみを同じ様に感じることは難しく、その人になってみなければその苦しみは分からない。 社会的課題に苦しみ困っている人の話に耳を傾けて聞くことはできる。しかし、一生懸命に何かを聞き取ろうとすれば、何かに気づき、その苦しんでいる人の訴えたい気持ちを受け取ることは可能である。大事なのは問題を認識しようとする意識である。ここにロジカルシンキングは通用しない。自分の価値観も必要ない。無我になって一心に傾聴することだけが必要である。そして、この心構えが、その人がたどり着くことのできる問題意識の原点になる。 企業にいる人にとって考えなければならないことは経済合理性であり、データから隠された問題を見つけ出し、どう解決すべきかを演繹的に推論し合理的な解を見つけ出すことが求められる。しかし、こうした意識では、社会的課題をどうやって解決したら良いか皆目見当もつかない。経済合理性で最適な解を見つけ出すことにプロボラは長けているかもしれないが、他人の苦しみの根源にあって打ち明けられない問題に対して意識が形成されないままでは、その人の苦しみを癒すことはできない。真の意味で他人の苦しみを理解するには、その人の生活の場に身をおいて肌でその苦しみやそこから抜け出せない閉塞感も感じなければ分からない。 企業で働いている従業員も社会の中で生活している一人ひとりであり、社会的課題に直面している人もいるかも知れない。その従業員は苦しみのなかに身を置いているが、その企業で働きながら自らで問題を解決していくことは難しく、一人で悩んでいる状況に置かれてしまう。しかし、こうした人と一緒に社会的課題の解決に取り組むなら、その従業員にとっても解決の一助にはなるし、企業としても社会的課題解決のために何ができるかを学ぶことができる。 副業を禁止している企業は多い。しかし、もし、パラレルワークで社会的問題の解決に取り組んでいる従業員がいるとしたら、その人は企業にいては学ぶことのできない学習、すなわち、経済合理性の論理では得ることのできない知性や社会的課題の解を導き出すノウハウを学んでいることになる。企業にとっては投資をしなくとも社会的課題解決のためになすべき学習ができていることになる。 これからの社会は“社会的価値創造の競争”の時代となり、各企業が競って社会的課題の解決になすべきことを模索していくことになる。経済合理性でものごとを思考できる人も求められる人材であろうが、それと同程度に、社会的課題の解決に身を置いている人の知恵やノウハウも企業の貴重な財産として考えなければならない。 これからの企業は意識レベルの競争にさらされていく。経済合理性で競争に生き残ろうとする意識に留まるか、社会的価値創造の競争に生き残ろうとする意識に発想を転換しうるか、それが、企業の持続可能な成長にとっても、社会の持続可能な発展にとっても、大きな分水嶺となる。
【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)
- 企業の社会貢献活動は寄付、スポーツや文化イベントへの共催等が多かったが、近年は事業を通しての社会的課題解決が求められる様になってきた。また、投資家や株主保護の立場からESGへの取り組みが求められる様になってきた。
- これまで企業は経済合理性で事業を思考してきたため、社会性を考える発想の転換はすぐには難しい。
- 経営者層の一人ひとり、社員の一人ひとりは社会の中で暮らす一人であり、夫々の生活環境において社会的課題に直面している。社員は、社会的課題解決について具体的なニーズを持ち、解決方法を提案できる顧客でもある。社員は、夫々の持つ社会的課題に関して企業と社会を結びつける架け橋でもある。
【未来における社会的価値の創造】
- 様々な価値観を持つ社員の意見を聞き入れていける環境づくりとして組織の多様性が重視される。
- 事業のあらゆるプロセスにおいて社会的課題解決に結びつく種がある。
- 広報部門やIR部門、CSR部門は対外的な役割や制度づくりを担うが、全ての社員が自分の職場で行うべき社会的課題解決に主体的に取り組んでいかなければならない。
- 企業の使命は利潤の追求ばかりではない。社会的課題の解決に取り組んでいる企業こそ社会は高く評価し、社会的課題解決に直結した事業の製品を購入する等で活動そのものを支えていく様になっていく。
関連事項
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