日本人の心情を表す様々な言葉を分析したところ、その心の奥底に「隷従と排除」の心理があることが分かりました。目新しいことを鼻から排除する一方で、実績があることには一も二もなく隷従することです。横並び主義がよい例です。隷従するがために強く排除する気持ちが強くなるとも言えます。 詳細は弊社のコラム「未来への歴史」#282 日本人の思考様式が心の奥底でイノベーションを拒んでいる をご参照ください。
1.『重たい社会』とは何でしょうか
変わろうとしない日本企業を揶揄して「茹で蛙現象」と表現する人がいます。そこには「成功体験」に固執する隷従と「変わること」への排除があります。これが『重たい社会』です。周りが変化しても頑として変わろうとしない社会、自ら率先して変化を起こそうとしない社会です。「失われた30年」という言葉がありますが、この間、日本社会には社会変革を巻き起こすようなイノベーション(ディスラプション)は起きていません。
2.「社会の脆弱性を解決する」という意識が『重たい社会』を打開するきっかけになる
その一方で、私たち一人ひとりの心の奥底には、温暖化問題を何とかしなければとか、人の権利を大切にしなければという思いが根付いてきました。しかし、『重たい社会』の壁に阻まれて、そこから先に踏む出すことができません。
前回のメルマガ 「虚ろ化する社会の新潮流と新たなトランスフォーメーションを担う企業経営」 では、誰もが日々の暮らしの中で直接かかわっている「食」を取り上げました。「食」に潜む根本的な脆弱性をつまびらかにすることで、『重たい社会』を乗り越えるきっかけをつかめればと考えたからです。
3.『重たい社会』を乗り越えて『変えていく』に変わっていく
『重たい社会』の背景には、正常性バイアス、アインシュテルング効果、現在バイアス、現状維持バイアス、確証バイアスがあります。そこで、一歩前に踏み出すためには、『重たい社会』は論理的に考えた結果ではなく、むしろ、「バイアスが原因なんだよ」 と自覚することが大事です。そうすれば、重たい 頸木(くびき)から解き放たれて、「変わっていく」ことを鼻から排除するのではなく「変わっていこう」という前向きな気持ちも湧き上がってくるというものです。
しかし、それだけでは不十分です。個々人の思いを大きなムーブメントにしていくには、共感する人たちや企業と結びついていかなければなりませんが、そこには、自分自身を突き動かすだけでなく、他の人たちを揺り動かす強い動機づけが必要です。
成功体験にすがろうとする「心の奥底にある隷従と排除の心理」を乗り越える原動力は、その成功体験が生み出した「社会の脆弱性」を自ら解決しなければならないという正義感に基づく意志です。それと、いつまでもこのままで良いという気持ちを断ち切って、新しいことに挑んでいこうという堅い決意です。
これは「真の企業価値の源泉」となります。そして「真の企業価値の源泉」になっていこうという湧き立つ思いが「新たな動機づけの根元」となりす。
4.「サステナビリティ・ビジネスネットワーク」の構築による実現
「サステナビリティ・ビジネスネットワーク」は、温暖化問題や人の権利を重視しようという思いに共感する人たちが協働するネットワークであり、協業する企業が結びついたビジネス・エコシステムです。
「社会の脆弱性を解決する」という意識は、多くの人々や企業を結びつける接着剤となります。「サステナビリティ・ビジネスネットワーク」には「社会の脆弱性の解決する」という強い意志があります。
「サステナビリティ・ビジネスネットワーク」によって、これまでのような経済性や競争優位性ではなく、 [1] 他社の真似のできない希少な組織能力を獲得しうること、 [2] 社会に対して影響力を発揮しうること、が可能になります。
5.『重たい社会』から私たちを解放してくれる「組織の根源的な力」
①「社会の脆弱性を解決する」という共通の目的、②「真の企業価値の源泉」になっていこうという動機づけ、③コミュニケーションを介して共感することのできる他の人や企業とつながり、協働しようという意志で結びついていく「サステナビリティ・ビジネスネットワーク」は『重たい社会』から私たちを解放してくれる「組織の根源的な力」となります。
本メルマガは弊社ホームページのコラム “未来への歴史” をもとに作成しています。“未来への歴史” とは、サステナビリティの未来社会を思い描いて日々書き綴った記事を思考の系譜を歴史として振り返ることができるようにと意図したものです。
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サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一