人々は、一人裕福になれば満たされるという夢から醒めて、社会全体が豊かにならなければ、自分も心豊かに暮らしていくことはできないと悟り始めている。しかし、政治、行政、営利企業、社会的企業、市民(一人ひとりの人)といった立場の相違で、社会的課題の解釈も、社会的課題の認識(自分にとっての位置付けと捉えている意味)も全く異なったもとなる。
社会的課題の解決に向けた活動は、その立場の相違によって生じるコンフリクトや社会的ジレンマによって、問題を一層複雑化させていく。
社会的課題を解決しなければならないという思いは誰にもある。しかし、それが、一人ひとりのコーズとして沸き起こり、夫々の立場を越えて社会的課題を解決していこうという機運が生まれ、人々の中でコーズが連鎖し創発していかなければ、閉塞した社会を解決していくことはできない。
そうしたことを実現するには、社会の中にどの様な条件が満たされ、政府?企業?社会的企業?市民は、どの様な役割を担うべきなのだろうか。本稿では、社会的課題の歴史的背景、連鎖して深刻化していく過程を示し、その連鎖する過程に沿って、一人ひとりに形成されたコーズが、連鎖し創発していくことで社会的課題を解決し、社会が成長していく姿を描いていく。また、創発のシナリオとして、夫々の立場にある人々が担う役割についても言及することにする。