グローバル社会では、強欲にバブルを求め彷徨するマネー資本主義社会が、エネルギー資源や食料資源の権益争奪を展開し、地球温暖化や食糧不足と貧困を深刻なものにしている。日本国内においても、停滞する経済と高齢化し増大する社会保障費、既得権益に固執する人々との間で絡み合う利害構造の中で財政が逼迫するばかりで、政治も混乱し、格差を肯定した政策が生んだ貧困に喘ぎ貧困から抜け出せない人々の生活を救うこともできない。
日本の製造業は高品質・高機能のものづくりによって競争優位を誇ってきたが、日本という閉じた市場が成熟化したことによって、また、新興国を中心とした簡便な機能で低価格を実現した製品の需要に対して、日本製品は過剰品質でガラパゴス化が進んでいると揶揄されて、競争優位性を失っている。一方、米国では、製造業の競争優位性が廃れて多くの産業が衰退したが、グローバルスタンダードを展開し、金融工学という錬金術で世界中から富を集める仕組みを確立した。これと同じ手法で、日本国内の産業の空洞化を厭わず、新興国への需要を狙って海外に投資して、海外で売れる製品を現地において低コストで生産し低価格で販売して、獲得した利益を日本国内に還元することで、日本経済を立て直すべきと主張している人も多い。しかし、早晩、新興国も高齢化し、経済成長も鈍化して成熟化していく。やがては、海外で得た利益を国内に還元するモデルも崩壊し、新たな成長市場を常に探し求めて彷徨することにしかならない。
また、グローバルには貧困や低い賃金、地球温暖化、食料不足などの様々な社会的課題が果てしなく広がっている。世界では人口が増大し続けているが、それと同時に大量生産、大量消費を前提とした経済成長を続ければ、エネルギー不足と環境破壊、食料不足と食糧資源の枯渇の問題が、一層、深刻になるのは明らかである。
自己矛盾に満ちたグローバル化の発展は、自らの将来を奪いつつある。そして、その一方で、次々に生起する様々な課題は、多岐亡羊として解決の糸口すら見えてこない。もはや、既成の仕組みの「リエンジニアリング」「リバースエンジニアリング」「リストラクチャリング」による再生では解決できないところまで事態は悪化しているのである。
今、最も高齢化の進んだ成熟化した日本において、企業が取り組むべきことは、経済合理性の追求というこれまでの規範に加え、社会的課題の解決をも追求する新しい規範に基づいた、地球環境と生態系、グローバルにある地域社会やそこで暮らす人々、企業そのものとそこにいる人・組織の三者を一体化した持続可能な成長である。
そのためには、偶発的に起きる事態への対症療法的な取り組みや、偶有性に依存した創造的破壊を積み重ねるだけでは不十分であり、将来をきちんと見据えた持続可能な成長のグランドデザインが必要である。本稿では、この持続可能な成長のグランドデザインを描くためのデザインポリシーについて論じることにする。
レポート、出版書をご参照下さい。