#314 戦略眼と現実解 データドリブン経営によるハイパフォーマンス組織の実現とAI技術活用の展望

1.用語の定義

本コラムでは、データドリブン経営によるハイパフォーマンス組織の実現について、より詳細に考察するために、これまで記載してきた関係する用語を改めて定義します。なお、この定義は、網羅性を重視した記述になっています。

1.1. ハイパフォーマンスコミュニケーション

#313 戦略眼と現実解 変化の兆しを先読みして行動を起こすハイパフォーマンスコミュニケーション の考察に基づくハイパフォーマンスコミュニケーションの定義を以下に示します。

  • 組織内外で賢明な意思決定を俊敏に行うために交わされるコミュニケーションであり、組織のメンバーが変化の兆しを先読みし、自律的かつ能動的に協働することを目的とした、循環的で双方向性を持つコミュニケーション

1.2. Well-being 経営

【サステナビリティ時代の戦略眼と現実解 メルマガ Vol.6 2024年12月24日号】 Well-being をもたらす組織変容とデータドリブン経営 の解説に基づくWell-being 経営の定義を以下に示します。

  • 従業員の幸福と企業の持続的成長を両立させるために、組織が身体的・精神的健康の支援、キャリア形成の促進、そして社会変化を先取りして変革を主導することを柱とする経営アプローチである。具体的には、安全安心な職場環境の整備、予防医療やメンタルヘルスケアの提供、ハラスメント防止、QOL向上のための福利厚生の充実、過重労働の防止、ワークライフバランスを支えるシステム構築を通じて従業員の健康を守り、人材の定着を図る。また、リスキリングやリカレント教育を通じて新たなスキル習得を支援し、個々人の成長意欲と企業への貢献意欲を高める。さらに、社会の変化を先取りし、フォーサイトを活用した先見性のある意思決定とイノベーションを推進することで、組織全体が変化を牽引し、従業員が主体的に価値創造に関与できる環境を提供する経営

1.3. データドリブン経営

【サステナビリティ時代の戦略眼と現実解 メルマガ Vol.6 2024年12月24日号】 Well-being をもたらす組織変容とデータドリブン経営 の解説に加え、組織で行われる意思決定は、①社会を俯瞰し、根元にある目的を追求し、公正で広範なデータに基づいて、倫理にも配慮したものでなければならない、②何よりも実存する生身の人間を対象とし得るものでなければなりません。このことを踏まえたデータドリブン経営の定義を以下に示します。

  • 公正で広範なデータに基づき、社会を俯瞰しながら、組織の根本的な目的を追求し、実存する人間に配慮した俊敏かつ賢い意思決定を、循環的なコミュニケーションプロセスを通じて実現する経営アプローチである。この経営は、倫理性、透明性、持続可能性を基盤とし、技術と人間性を融合することで、組織の価値創造と社会的責任を両立させるものである。

1.4. モデリング

#313 戦略眼と現実解 変化の兆しを先読みして行動を起こすハイパフォーマンスコミュニケーション の考察で示した「モデリング」のより詳細な定義を以下に示します。

  • 現実の事象や思考、概念、またはシステムを、理解しやすく、分析可能で、活用できる形に抽象化・構造化する行為であり、その過程で現実を適切に捉え、共有し、操作し、未来の行動や結果を導くための知的活動である

「モデリング」という言葉は多義性があります。例えば、行為としてのモデリング、プロセスのモデリング、データのモデリング、思考方法論のモデリング、構造のモデリングなど、その対象によって様々です。そしてこれらには、社会学的考察も必要となります。そこで、上記コラムの記述、および、タルコット・パーソンズの構造機能主義、プラグマティズムや実存主義の哲学、ハーバート・サイモンの組織論を参照して広義に網羅的に再定義しました(ChatGPT 4o使用)。

また、モデリングの流れを上記コラムの考察に基づいて以下のように設定しています。

  1. 視点を決めて論点を整理する
  2. 軸を決めて体系化する
  3. 概念構造を定義して階層化する
  4. 正規化して細部の役割(機能)を具現化する
  5. 基準や手順を決めて行動の仕方を定める
  6. 作成したモデルの有効性の検証と改善をする

2.データドリブン経営の生成AI、自律型AIによる実現

2.1. モデリングをする視点から捉えたデータドリブン経営の全体像

モデリングの各過程について、データドリブン経営がもたらす効果やWell-being 経営への貢献、生成AI、自律型AIで実現する際に求められる機能(果たすべき役割)を下表に整理します。近年、経済合理性に加えてサステナビリティが重視されるようになってきていることを踏まえて、モデリングの各過程が目指す姿を Well-being への貢献として設定しています。

      本表は、第1章の各定義をインプットとして ChatGPT 4o が作表したものに筆者が加筆して整理して作成しています。

2.2. データドリブン経営システム

データドリブン経営システムによるマネジメントの流れを下図に示します。本図は、生成AI、自律型AIがさらに進化しデータドリブン経営への使用も拡がっていくことを想定して、第 2.1 節で整理した「モデリングの過程、データドリブン経営の効果、生成AIと自律型AIの役割、Well-beingへの貢献 対応表」をもとに作成しています。

3.データドリブン経営の課題

3.1. データドリブン経営システムを実現する上での問題点

こうしたデータドリブン経営の流れを実現しようにも、下図「情報共有の問題点」に示すように、必要な情報の収集が難しいというのが現実の問題です。要因は「情報が役に立たない」にあるように様々です。

 

3.2. 情報収集の課題解決に向けて

データドリブン経営を実現していくには、①全体を構想してコード体系とデータの標準モデルを作成する、②経営上の隘路となっている分野から実現化を進める、③実現化に際しては情報の粒度(情報を取得する時期(四半期~月次、日次)、組織(部門~担当者)、顧客(業界~グループ~企業~部署)、事業(事業領域~製品系列~製品)等)を揃えて収集する、④組織や事業の統廃合を想定していく、といった工夫が必要となります。

 

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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