#95 経営において論理思考が正しく機能するための条件

 今、世の中では論理思考が重要だと言われている。しかし、本当にそうなのだろうか?
 論理思考とは何かと言うと、主に、演繹的思考と帰納的思考であろう。一般化した問題についての因果関係が正しいと認められているなら、個々個別の問題にその因果関係を当てはめても正しく成り立つと考えれば演繹思考である。病気の症状が同じならその原因が特定され服用すべき薬も決まってくる。一方、いくつかの個別の事例で因果関係が成立しているなら、一般的にも正しいと考えるのが帰納的思考である。この症状の時にこの薬はよく効くから、同じ症状の今回もこの薬を服用しようと考えるものである。
 しかし、いずれにしても、その問題に対する捉え方の範囲や前提条件の設定が正しくなければ、答えも正しく導きだされない。知見があまりなければ演繹思考の結果も浅はかなものとなろうし、経験則に頼ったかじ取りは危うい。
 経営を考える上で真に大事なことは、むしろ、その問題に対する捉え方の範囲や前提条件の設定そのものである。組織の中では、鶴の一声や人事権を持つ人の声高な意見によって意思が決まってしまうことがある。しかし、その場合、この「問題に対する捉え方の範囲や前提条件の設定」に問題が内包されてしまう可能性が高くなる。
 人には、それぞれにものの見方があり様々な知見がある。組織の中にこうした多様性があることではじめて「問題に対する捉え方の範囲や前提条件の設定」が検証され、正しく論理思考が機能することが可能になる。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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