今、トランプ米国次期大統領のツイッタ-が世界をかき回しています。 例えば、トヨタのメキシコ工場についての批判が話題になっています。
トランプ氏の感性はとても分かりやすく、その先の思考も既に明確です。 フォードが既にメキシコ工場建設を断念したことをモデルにして(成功体験にして)、自動車業界に対して、堰を切った様に、次々に同じか、事業規模に合わせて、それ以上の対応を求めてきます。
彼は、10年で2500万人の雇用創出、年3.5%の経済成長をコミットしています。 トヨタが、既に、13万6千人の雇用を創出していようと、それは関係ありません。 もし、その数字を根拠としてメキシコでの工場建設を正当化しようとすれば、それは言い訳と受け取られ、むしろ、トランプ氏の思惑通りの展開になり、彼のコミットメントに対して、例えば、それだけの実績のあるトヨタが、今後、いつまでにどれだけの貢献をするか、コミットさせられることになります。
フォードは、既に、700人の米国内の雇用創出をコミットしましたが、それのみにあらず、IoTやAIに関わる新産業関連分野への投資と実現効果に対するコミットが求められていると推察されます。 そして、この数字を達成するかどうかで、そこに携わる人達の値打ちが決まってしまいます。もし、数字を達成できなければ、排除されるだけです(関税等の報復措置を断行するだけです)。 “ 数字で人となりを評価し、数字で人を動かす ” これが、成果のみを追求して成功した人が陥る典型的な数字至上主義のイデオロギーです。
さて、自動車産業として俯瞰して見れば、温暖化対策(脱ガソリンエンジン車)、交通事故の防止と事故死者数を減らす経営努力(自動運転車の開発)は必須であり、環境に配慮した安全・安心の優劣が、これからの自動車市場の競争優位性を決める最重要ファクターとなってきています。 2020年、2030年、2040年、2050年の将来の社会に何をコミットして実現していくかが、自動車産業界には求められています。
自動車産業は、保護主義でものごとを考え、一人の大統領の任期中(最短4年、最長8年)の成果ばかりを考えている訳にはいきません。 トランプ氏の子供、孫の時代に生きる人に対して何をコミットするかが、自動車産業、とりわけ、名指で批判しされているトヨタの未来を見据えたビジョンとその実現に向けた戦略の説得力が鍵となります。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一