昨日のコラムでは、マクロな発想では問題が解決できないばかりか、問題解決が遅れることで、利害の衝突が深刻化し、より一層のリスクを抱えることにもなると指摘しました。 そして、サステナブル社会、社会の持続可能な発展 の実現にはもっと、一人ひとりが描くライフスタイルを実現していくという視点、人と人との豊かなつながりを創造していくという視点で、“ 一人ひとりが暮らしの中で実現していく社会の発展 ” について考えなければならないと記しました。
サステナブル社会、社会の持続可能な発展は一人ひとりの暮らしの視点で(ミクロに)発想することで描ける
先のコラムで「持続可能な社会の開発」という発想では サステナブル社会 は描けず、「持続可能な社会の発展」でなければならにと指摘しました。
『開発』という言葉には 他者へに働きかけて何かを他の何かに変えていく という意味が含まれており、一時のものとなり、当初の目的を達成したら終了するという印象がつきまとうこと、誰かに言われて行う行為は他力本願の文化につながってしまうことを示しました。 『開発』という言葉には、上からの目線で指示するという心理が働いてしまいます。
一方、『発展』という言葉に含まれる 内発性 であり、外部環境の変化に合わせて 自ら変わっていく ことのつながりこそが「持続可能」が実現へと結実していきます。
マクロの視点に立っていては、どうしても『開発』の発想となってしまい「サステナブル社会」の実現にはつながりません。 一人ひとりの暮らしの視点に立って 自ら変わっていく 活動に寄り添い、ともに『発展』していくことで「サステナブル社会」が実現していきます。 この 一人ひとりの暮らしの目線で考えていく ことがミクロな視点です。
サステナブル社会、社会の持続可能な発展への発想の転換
「#88 これまでのビジネスを “サステナブル” にバリューアップする」のコラムでは、サステナブル(サステナブル社会、社会の持続可能な発展) に発想を転換するための手がかり(キーコンセプト)として下記の事項を列挙して例示しました。
- もったいない (節〇、省〇、再〇 例:再生エネルギー、食品廃棄、3R)
- 負担の低減 (看護・介護・介助の負担低減、家事仕事の負担低減、通勤・職場の負担低減、生活のサイクルに合わせていつでもどこでも働ける環境の創造)
- 違いを受け容れる (豊かさの創造、多様性を育む、〇の受容 例:物多様性、雇用の多様性、働き方の多様性)
- お互い様 (寛容社会の創造、〇への共感、〇との共生 例:生活弱者の社会参加の支援、いじめのない社会、結いの社会、地域の暮らしに寄り添う)
- 医療と健康 (医学の進歩、地域医療の充実、心身の健康維持・促進、リハビリの充実(社会生活への復帰の支援))
- 癒し (笑いと笑顔のある暮らしの場の提供、彩のある暮らしの創造、心身ともに癒されることの創造(享楽ではなく、また、刹那的な気晴らしではなく永続的な癒し))
- 安心 (社会不安からの解放、〇の安全・安心 例:老後の暮らしの安心、食の安全と安心、暮らしの安全と安心(防災(共助・自助の支援)、防犯)、セキュアに暮らせる環境の創造))
- 子育て・教育 (子育てしやすい環境の整備、子育ての負担の低減、平等な教育機会の提供)
サステナブル社会、社会の持続可能な発展へ発想を転換するには、これら事項を手がかりにして、ミクロな視点から考えれば良いでしょう。
2017年に実現するサステナブル社会、社会の持続可能な発展
昨日のコラムで記した様に、2017年の日本は「グローバリズムの衰退に伴う世界規模の変動、アメリカ・欧州・ロシアの間で繰り広げられるリバランス、中国の政策によって巻き起こされる様々な変動に揺り動かされ続ける」ことになります。そして、国内では、「一億総活躍社会」に向けた人口減少社会化する中での経済成長戦略の議論が展開されることになります。
2017年に、日本に住む私達は、グローバル社会の中にあって自立した意思を持つことが、これまで以上に求められるでしょう。 グローバルでの経済環境によって為替レートや株価が上昇下落を繰り返すことになりますが、何よりも、地に足をつけて、人口減少社会の中で心豊かな暮らしを実現して、将来社会につなげていかなければなりません。 それは、現政権が進めている「働き方改革」と「地方の活力の創出」であるに違いありません。 2017年には、この2つのテーマについて答えを出さなければなりません。
また、このテーマに関して、社会の変革を起こしていくイノベーションも必要となるでしょう。 今は、人工知能(AI)やIoTが脚光を浴びていますが、現段階では、社会の変革を起こしていくにはソリューションとしての力が不足しています。 人工知能(AI)が働き方を変革する、ヒューマノイドロボットが社会を変える、完全自動運転車と電気自動車が交通手段を変革し地方での暮らし方を変えて過疎化を解消するなどは、まだ、10年後、20年後といった長期スパンで考えるべきテーマです。 今のところは、もっと基本的な部分でのブレークスルーが必要であり、それにより働き方改革や地域の活力を創出する先進的なソリューションを考え出すのが、2017年の課題とも言えます。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一