社会が変容して顧客の深層にある価値観が変化してくると、これまでのビジネスを支えてきたパラダイムも駆逐され、新たなパラダイムへとシフトしていきます。
これまで利便性を追求し顧客ニーズを満たすことで価値を創造してきたビジネスは、新たなパラダイムへのシフトによって、急速に市場価値を失うことになります。 こうした変化は、ある技術の出現によっても、社会に衝撃を与える出来事をきっかけにしても、一気に進展することがあります。 大事なことは、このパラダイムシフトに乗り遅れることがないように、その兆しの持つ意味を捉えて先手を打つことであり、これまでのビジネスをダイナミックに変革していくことです。
これまでのビジネスを “サステナブル” にバリューアップするとは
今起きているパラダイムシフトは、便利であれば良い、安ければ良いという経済合理性ばかりでなく、安全・安心で自然環境にもやさしいということに加えて、社会問題にも向き合いその解決に供する商品を提供しなければ市場に価値が認められなくなったという変化です。
この社会の変化が意味することは、これからの商品においては、サステナブル “社会の持続可能な発展” を意図してデザインされなければならないということです。 それはまた、単に、寄付とか、社会貢献活動の支援につながるとかいうことではなく、商品自体の機能に サステナブル “社会の持続可能な発展” の仕組みが織り込まれていなければならないということです。
すなわち、これからの商品のデザインコンセプトは、前面に 社会の持続可能な発展 へのビジョンがあり、根底に サステナブル(持続可能性) を基本的な設計思想を築き上げ、その 5W1H として、これまで培ってきた利便性や経済合理性、安全・安心の品質、自然環境を保護し育んでいく技術を進化させ実現してくという仕組みが必要となります。
一方、サステナブル(持続可能性) と、これまでの利便性や経済合理性、安全・安心の品質、自然環境を保護し育んでいく技術への発想にはギャップがあり、うまく結び付けられてきませんでした(上記の様に、寄付とか、社会貢献活動の支援につなげるという発想に留まっていました)。 そこで、この間をつなぐために「これまでのビジネスを “サステナブル” にバリューアップする思考への手がかり」を解明して、発想の転換を促す必要があります。
これまでのビジネスを “サステナブル” にバリューアップする思考への手がかり
そこで、この “サステナブル” にバリューアップするための手がかり(キーコンセプト) を以下に列挙し例示します。
- 今も将来にとっても、自分らしく生きる生き方の実現 (より広い世界で生きたい若者にとってありがたい、子育てにとってありがたい、高齢者にとってありがたい、年とともに変わる嗜好、子供も若者も高齢者もともに暮らせる地域、家族が語り合える機会の創造、世代の壁を越えて信条で語り伝え合えるコミュニケーションの場の創造)
- もったいない (節〇、省〇、再〇、シェア 例:再生エネルギー、食品廃棄、3R)
- 負担の低減 (看護・介護・介助の負担低減、家事仕事の負担低減、通勤・職場の負担低減、生活のサイクルに合わせていつでもどこでも働ける環境の創造)
- 違いを受け容れる (豊かさの創造、多様性を育む、〇の受容 例:物多様性、雇用の多様性、働き方の多様性)
- お互い様 (寛容社会の創造、〇への共感、〇との共生 例:生活弱者の社会参加の支援、いじめのない社会、結いの社会、地域の暮らしに寄り添う)
- 医療と健康 (医学の進歩、地域医療の充実、心身の健康維持・促進、リハビリの充実(社会生活への復帰の支援))
- 癒し (笑いと笑顔のある暮らしの場の提供、彩のある暮らしの創造、心身ともに癒されることの創造(享楽ではなく、また、刹那的な気晴らしではなく永続的な癒し))
- 安心 (社会不安からの解放、〇の安全・安心 例:老後の暮らしの安心、食の安全と安心、暮らしの安全と安心(防災(共助・自助の支援)、防犯)、セキュアに暮らせる環境の創造))
- 子育て・教育 (子育てしやすい環境の整備、子育ての負担の低減、平等な教育機会の提供)
- 糧を得て自分の暮らしを大切にする働き方の実現 (時間や場所に拘束されない働き方、生活を大切にできる働き方、自分らしい生き方を磨いていける働き方、キャリアアップできる働き方、人との交流の機会を創造する働き方、独自性を発揮して創造できる働き方)
これまでのビジネスを “サステナブル” にバリューアップするために
こうしたアイディアへの発想の転換を促進し、実現化していくためには、以下に示す環境の整備が必要となります。
- 壁を作らず、いつでも、誰とでも、コミュニケーションをとれる組織体制、制度、道具があること
- 意思決定の過程を透明にすること
- 環境の変化にダイナミックに対応し、かつ、オープンシステムとして新陳代謝していける仕組みであること
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一