#38 新たな技術革新が切り拓く分野に経営を転換する

技術革新の兆しを捉える

人々の社会通念や価値観、好みなどについての顧客ニーズの変化を、その兆しの内から常に捉えて、どのタイミングで次世代技術を開発するか、いつ世代交代をさせるかといった準備をしておくことが必要である。

 

(1) 技術革新を社会全体の視点で捉える
多くの場合、革新された技術そのものに着目しがちである。しかし、本質的に大事なことは、その技術革新によって実現された社会の変化であり、そこから波及して起こる既存産業の衰退と新たな産業の芽である。例えば、以下のことを参考に考えてみると良い。

 

  • 蒸気機関と産業革命(大量生産の仕組みの出現)
  • 自動車と人や物の流れの変化(人の交流の変化、物流の変化)
  • 電気の家庭への安定供給と家電の普及(家事の省力化と娯楽の変化)
  • テレビと電話の普及によるテレホンショッピングの普及(販売チャネルの変化と購買方法の変化)
  • コンピュータと業務処理の効率化・高品質化(単純な繰り返し作業の自動化、微細作業の自動化)
  • 通信技術、Web技術の普及によるネットワーク社会化
  • デバイス技術とスマート端末による情報探索・収集・蓄積・伝達手段の携帯化

 

そして、その引き起こされたネットワーク社会がまた、技術革新の必要性を生み出し新たな社会の変化を巻き起こしていく。

  • 個人が情報発信源となり、コミュニケーションの仕方が変わり、人と人を緩やかなネットワークでつないでいく
  • 個人が発信した情報がネット上で口コミとして瞬く間に広がって行く(評判やクレーム情報の広がり)
  • 能動的に商品を探索でき、様々な選択肢の中から購買の意思決定が可能となる(プロモーションの仕方の変化)
  • 政治家や行政よりも市民が先に情報をつかんでいる、経営者よりも社員の方が先に情報をつかんでいる
  • M2MやO2Oとビッグデータ社会
    ・マクロマーケティングから個人の心の深層にある感動につながるマーケティングへ

 

(2)?データから読み解く技術革新の兆しと経営資源を集中する上での論点

長期にわたり売れ続ける長寿の事業もあれば、短い周期で世代交代を余儀なくされる事業もある。長寿の事業も、よく見れば常に市場の変化に合わせて事業の転換を図っているから成功していると言えるものも少なくない。

 

一方、世代交代を余儀なくされている事業も、実はマイナーチェンジの繰り返しで凌いできているというケースも多く、そこに経営資源が奪われ続けてきたために、大きな技術革新が起きたときについていけずに、一気に失速してしまうといった事例をしばしば目にする。そこで重要なことは、業界にカタストロフィーは起こるか、この商品の販売量はどこが上限かを見極めておくことである。

 

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一

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