#36 競争優位を最重点課題として経営を推し進める (1) 競争優位の戦略論

1.市場競争の枠組みを読み解いて優位性を発揮できる分野に経営資源を集中するために

 

市場競争の枠組みを読み解いて優位性を発揮できる分野に経営資源を集中する戦略策定の基本手法として、現在でも多くの企業が、1960年代に提唱されたSWOT分析[Strength(強み)、Weakness(弱み)、 Opportunity(機会)、Threat(脅威) ]やPPM分析[Products Portfolio Management](1960年代にボストンコンサルティンググループが提唱した経営分析手法)を採用している。ここで、問題になるのは以下の場合である。

 

  • 花形産業に対して強み・機会があるが、競争が激しく脅威がある場合 (経営資源の消耗戦になりかねない)
  • 金のなる木に対して弱み・脅威がある場合 (利益を得て投資を回収したいにも関わらず競争劣位であり、競合他社に市場を食われてしまう)
  • 負け犬に対して強み・機会がある場合 (そもそもこの分野では儲からない)
  • 問題児に対して強み・機会がある場合 (そもそもこの分野では儲からない)

 

1990年代にはMichael E. Porterによる5Forces分析(供給企業の交渉力、買い手の交渉力、競争企業間の敵対関係、新規参入業者の脅威、代替品の脅威)による業界間・業界内における競争環境の分析と競争戦略立案の手法[1]が流行し、2000年代にはJay B. BarneyのVRIO[Value(価値)、Rare(希少性)、Inimitable(模倣不可能性)、Organization arrangement to execute Strategies(戦略に対する組織化の適合性)]による経営資源管理に着目した戦略分析の手法[2]が日本にも紹介された。
2010年頃より、ビジネスエコロジー(生態系)という考え方が広がった。

 

  • 自然界の生態系を参考にしたモデルであるが、そこでは、多種多様な生物が自然環境に順応しながら共生し弱肉強食の中で生き抜き、更には、そのこと自体が自然環境を織りなして進化を続けていく。ビジネスエコロジーは、自然界のアナロジーとして、ビジネスの世界の様々な組織が企業間競争と合従連衡をしながら生存と成長、進化を続けていると考える。
  • 複雑化したビジネス世界の中で、競合企業との生存競争を生き抜くために、自社のリソースだけでは解決できないことを、サプライチェーンや販売チャネルとの共生、パートナー企業との共生により実現化していこうという組織の行動を、夫々の関係者がメリットを享受できるように全体としてのバランスを保ちながら戦略的に仕組んでいくモデルである。

 

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一

 

[1] Michael E. Porter, “COMPETITIVE STATEGY”, 1980, 『新訂 競争の戦略』ダイヤモンド社、1995
[2] Jay B. Barney, “GAINING AND SUSTAINING COMPETITIVE ADVANTAGE, Second Edition”, 2002, 岡田正大訳『企業戦略論 上』ダイヤモンド社、2003年12月

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