今日の経済社会モデルは、高度経済成長を支えてきた 画一的な大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄システム から パーソナルニーズに対応する多品種少量生産・経験価値の販売(提供)・経験価値の消費・少量廃棄システム へと変化してきました。また、私たち一人ひとりの心の奥底に、温暖化問題を何とかしなければとか、人の権利を大切にしなければという思いが根付いてきたことにより、経験価値として期待する内容もエシカル消費に変化してきています。
こうした変化を背景にして、企業の戦略モデルも、①顧客との接点を持つ販売チャネルとサプライチェーンや素材の生産者と連携したビジネス・エコシステムによって、②他の事業者が模倣できない希少な価値を創造することのできる優位性を構築して、③社会への影響力を確立していく、『社会的価値を創造する戦略』へと転換が迫られています。
これは、かつての自社商品の差別化を図ることにより優位性を確保する競争戦略ではなく、社会発展に視座を高めて社会的価値を創造することにより企業価値を高めていく戦略への転換です。
1.サステナビリティ経営とは
社会発展に視座を高めて社会的価値を創造する経営戦略が「サステナビリティ経営」です。「サステナビリティ経営」と称する経営は下記のような類型があります。
- 多様化するパーソナルニーズにきめ細かく対応し顧客経験価値を実現する経営
- エシカル消費を実現する経営
- グリーン消費を実現する経営
- シェアリング社会を実現する経営
- 循環型の経済社会を実現する経営
2.サステナビリティ経営の戦略思考モデル
「サステナビリティ経営」を実現していくためには、戦略メタモデルも新たに構想しなければなりません。そこで、本コラムでは、以下に列挙する視点と論点から新たな戦略メタモデルを構築し深掘りしていくことにします。
2.1 戦略の深掘りの視点
「サステナビリティ経営」を実現していくための戦略メタモデルを深掘りしていく視点としては、以下の項目を挙げることができます。
- 消費から考える
- 素材の調達から考える
- 生産から考える
- 物流から考える
- 流通から考える
- 文化から考える
2.2. 戦略の深掘りの論点
「サステナビリティ経営」を実現していくための戦略メタモデルを深掘りしていく論点としては、以下の項目を挙げることができます
- 経済性を高める
- 機能と品質を高める
- 歩留まりを高める
- 効率を高める
- ブランド力を高める
- 生産性を高める
- 排出廃棄を削減する
- リユースを促進する
- リサイクルを促進する
- 人権尊重を重視する
- 法令遵守の意識を高める
- ビジネス環境をセキュアにする
3.戦略思考モデル
上記の戦略の深掘りの夫々の視点について夫々の論点から考えなければならないことを、以下にメタレベルで抽出して整理します。
3.1 経済的に企業価値を高めるための戦略思考モデル
ここで抽出しているのは「2.2 戦略の深掘りの論点」のうち『1. 経済性を高める、2. 機能と品質を高める、3. 歩留まりを高める、4. 効率を高める、5. ブランド力を高める、6. 生産性を高める』です。これらは、従来からの経済的に企業価値を高めるという論点が中心テーマになりますが、それらにエシカル消費、グリーン消費、リサイクル消費などのサステナビリティに関する要素を加味したものです。
上記の中で使用している「管理」は、『標準化、基準の策定、ガバナンスとコンプライアンス/遂行(周知徹底・教育・実施サポート)/監視(モニタリング)/監査、管理システムによる運営、PDCAサイクルによる推進』などを総合的に含めた活動として掲載しています。
3.2. リデュース、リユース、リサイクルの視点からの戦略思考モデル
ここで抽出しているのは「2.2 戦略の深掘りの論点」のうち『7. 排出廃棄を削減する、8. リユースを促進する、9. リサイクルを促進する』です。これらは、従来からの “減らす(Reduce)、繰り返し(Reuse)、再資源化(Recycle)” が中心テーマになります。
3.3. 安全安心な社会の視点からの戦略思考モデル
ここで抽出しているのは「2.2 戦略の深掘りの論点」のうち『10. 人権尊重を重視する、11. 法令遵守の意識を高める、12. ビジネス環境をセキュアにする』です。これらは、人権尊重を重視して、コンプライアンスによりセキュアな社会にしていくという文脈での戦略思考になります。
上記の中で使用している「セキュリティ」は、『リスクアセスメント、セキュリティ基準(ガイドライン)、システムのセキュリティ対策、データ保護とバックアップ、日常的なセキュリティの対策、第三者監査』などを総合的に含めた活動として掲載しています。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一