社会の持続可能な発展(サステナビリティ)を見据えて、将来の成長分野に経営資源を集中する
(1) 企業が果たすべき社会的責任の論点を考える
企業が営む事業によって利便性が実現されて社会が発展して生活が豊かになり、利益を得て税金を払っていさえば社会的責任を果たしているというのは、高度経済成長期のロジックである。
- 自然環境保護、人権保護、法令遵守(略して、ESG)が重視される今日では、これら社会的責任の視点が抜け落ちている、あるいは、これら視点が軽視されることで問題が引き起こされる、社会的課題を解決する活動への関心が低いなどが露呈すると、その企業は社会からの信用を失い顧客を失ってしまう。投資家も企業が不祥事を起こすことで株価が暴落するようなことになれば損害を被ることになるため、業績や財務状況ばかりでなく、ESGで企業を評価しようという動きが広がってきている。
- しかし、何よりも、企業のESGへの真剣な取り組みが好感を生んで企業ブランドの向上にもつながること意識して、その付加価値が顧客を惹きつけることを重視するべきである。
- とはいえ、必要最低限のESGへのおざなりな取り組みではなく、積極的に戦略を持って社会的課題を解決する取り組みを事業活動に織り込んでいくことが、社会の一員としての公器たる企業には求められている。
世界には色々な社会があり、色々な価値観のもとに色々な人が生きている。人は一人では生きていけない。大事なことは、人を自分と同化することでも、社会全体を自分の“心豊かになれる社会”、“自分にとってのありたいと願う世界”に統一することでもなく、お互いを受容して共に生きていける社会を創ることである。
- お互いを受容して共に生きていける社会を創るためには、何よりも、自分の追求する“心豊かになれる社会”、“自分にとってのありたいと願う世界”を明確にすることが必要である。
- 人は他人の意見に流されやすい。生きる糧を得るために忙しく働かなければならず、我を振り返る余裕もないかも知れない。自分の追求する“心豊かになれる社会”、“自分にとってのありたいと願う世界”を考えることは難しいことである。
- 教科書の詰め込み(暗記による勉強、答えのある学問の勉強)による教育を受けた日本人にとって、自分で考えて、自分のの追求する“心豊かになれる社会”、“自分にとってのありたいと願う世界”を描くことは難しいことでもある。
(2) Beyond the Next,? and? Beyond the Future
どの企業も、生き残りをかけて少しでも早く、少しでも多くの知見を獲得し、他社との差別化を図って優位性を確保しようとしている。情報技術が進み、誰もがグローバルに最新の社会、政治、経済、技術に関わる情報を入手しうる。また、SNSにより誰もが、自由に情報を発信し、欲しい情報を探索して手に入れることができる。
- 組織内の情報は経営者に集まるが、現場の情報からは遠い。
- 社会や市場に関する情報を組織内の誰もが入手し、現場の状況は現場にいる従業員がいち早くつかんでいる。
今や、経営者のみならず、組織にいる誰もが夫々の専門性を活かして、社会、市場、顧客の視点に立って、状況の変化をいち早く認識し、組織の現状に問題意識を持って行動していく時代が到来しつつある。“組織が一丸となって”“組織の総力を上げて”という言葉はこれまでも、これからも大切にされる言葉である。しかし、一律に全員が行動していくという考え方は大量生産・大量販売・大量消費の時代の発想である。これからは、多様化する顧客ニーズに自ら解決策を考えてその場で対応していくために “一人ひとりが内発的に自律して考えて行動していく” ことが求められる時代であり、サステナブル経営(サステナブルマネジメント)を実現する、本質的で抜本的な経営革新が求められている。
- 組織にいる一人ひとりが専門性を磨き、培われた多様な専門性を相互に活かし合いながら、一人ひとりが内発して自律的に行動し、創発しうるチームワークによって唯一無二の組織独自の価値を創造することが可能となる。
- 組織にいる一人ひとりが内発的に自律して課題を解決していく、そんな組織文化を創り上げることに、これからの経営者はリーダーシップを発揮しなければならない。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一