#289 戦略眼と現実解 社会と環境に視座した変革への挑戦 使い捨て文化からの脱却

経済発展の原動力 「規模の経済」

「規模の経済」という言葉があります。一言で言えば、数をたくさん作って単位当たりのコストを下げるという考え方です。そのためには、たくさん作るための設備投資に資本を集中させて、製品の仕様や製法を標準化して、画一的な製品を画一化したプロセスによって大量に生産すれば良いということになります。

これは販売でも同じです。まとめて大量に注文を受けることで低価格化を実現します。これはセールストークにもなります。物流を考えても、一度に大量に運べれば物流コストは下がります。小売りにしても、1個ずつ売るよりは、ダースで売った方が手間が省けます。

また、大量生産・大量販売したものの買い替え需要も喚起しなければ、事業としては長続きしません。そのためには、適当な時期に新製品を投入することで既存製品の機能的陳腐化を煽ることで、製品のライフサイクルを短める戦略がとられます。そうした文化が生産者側と消費者側との間で合意形成されて定着すれば事業は当面の間は安定して維持され続けます。

「規模の経済」こそが様々な社会問題を引き起こしている元凶である

こうして大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄の文化が社会の中に浸透していきます。しかし、その逆機能として、環境汚染の問題が引き起こされることになります。言うなれば、「規模の経済」が追求する効率性や経済合理性が環境汚染などの問題を引き起こしている元凶とも言えます。

一方、例えば、再生可能エネルギーにしても、EV(電気自動車、石油を燃料として使わない自動車)にしても、市場で受け入れられるためにはコストダウンが求められ、この分野においても「規模の経済」が追求する効率性や経済合理性が求められます。結局、この産業分野においても、早晩、大量廃棄の問題が顕在化して社会問題になると推察されます。そして、さらには、レアメタルの囲い込みが国家戦略にもなって、国際社会の分断すら引き起こしているのです。

「規模の経済」による効率性や経済合理性の追求の仕方を抜本的に変革することから破壊的イノベーションを考える

環境汚染問題や資源争奪問題を解決するべく社会変革を考えるのであれば、「規模の経済」による効率性や経済合理性の追求の仕方から抜本的に変革することが必要になります。

むしろ、これまでの「規模の経済」による効率性や経済合理性の追求の仕方が環境破壊問題や資源争奪問題を引き起こしているのであれば、この手法は間違いなのかも知れません。代替手段を考えなければならないのであれば、そこにこそ破壊的イノベーションの種が潜んでいるとも言えます。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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