私たち一人ひとりは社会とつながって生きています。そして、様々な活動を通して社会に何らかの影響を及ぼしながら暮らしています。もちろん、一人ひとりの力は小さく、しかし、コミュニティを作りながら、あるいは、ソーシャルネットワークを使って、自分や自分たちの思いを社会に伝えようとしています。
企業も同じです。個々の企業が社会への影響力を得ようとしても、そう簡単にできることではありません。しかし、企業は、事業を通して、株主や顧客、販売チャネルやサプライヤ、様々な取引先、従業員と結びついて活動しています。個々の企業の力は小さいかも知れませんが、その存在自体の影響力の範囲は広大な広がりがあります。
営利目的の企業の活動は、もちろん、事業を通して利益を獲得することです。しかし、当コラム「#284 戦略眼と現実解 『社会的価値』と『企業が社会の中で存在する意義』」でも記したように、今日の企業には『社会的価値』が求められています。大量生産・大量販売・大量消費の発想に基づく競争戦略で考えて「たくさん売れれば良い」という時代は終わり、これからのサステナビリティの時代では「社会的価値の創造」が企業の価値として問われることになります。
社会への影響力と真似のできない希少な優位性
当社では、社会への影響力を以下のように定義しています。
- 社会の趨勢を背景として社会発展の方向性を捉えて、創造する社会的価値のテーマと想定される効果をデザインし、具体的にマテリアリティに落とし込んで、様々なステークホルダーを巻き込んで事業を展開し、そのコンセプトが社会に普及し浸透している
また、真似のできない希少な優位性を以下のように定義しています。
- 他に真似のできない希少性が、社会的課題解決のマテリアリティに対する事業を可能にしている
社会的価値を創造するという視点での希少性は、アイデアの独自性というよりも、ビジネス・エコシステムとして実現される希少性であり、そうしたエコシステムを実現しうる組織能力の希少性としての意味合いに重きが置かれることになります。
「行動決定要因の社会的構造」に社会への影響力と真似のできない希少な優位性を位置付ける
下図は「行動決定要因の社会的構造」に社会への影響力と真似のできない希少な優位性を位置付けたものです。「社会的価値」が[個々人-個としてのアイデンティティの確立]の象限に位置付けられることを踏まえれば、必然的に「社会への影響力」「真似のできない希少な優位性」もこの象限に位置付けられます。
これからの時代の真のブランディング
上図の結論は、個々人の自立し自律した取り組みが「社会への影響力」を発揮させ、「真似のできない希少な優位性」の構築を可能とするということからも、当然のことと言えます。
先に記したように、大量生産・大量販売・大量消費の発想に基づく競争戦略で考えて「たくさん売れれば良い」という時代は終わりました。「映え」に訴求して顧客の目を引いたり、キャッチコピーで購買意欲をかき立てたりする競争戦略の一環としてのブランディングでは不十分です。
これからの社会では「社会的価値の創造」が企業の真価が問われます。まさに、「社会への影響力」を発揮し、「真似のできない希少な優位性」の構築を可能としていく取り組みにこそ、企業のブランド価値が宿ります。これからの時代は、社会への影響力と真似のできない希少な優位性の追求こそが真のブランディング になるのです。
そこでは、個々人の自立し自律した行動が求められ、また、個々人の自立し自律した行動を促進する組織づくりが求められます。そして、そうしたことを実現可能にする個々人のスキルと組織能力が必要になります。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一