#282 戦略眼と現実解 日本人の思考様式が心の奥底でイノベーションを拒んでいる

日本人の心の奥底にある思考様式

当社では、日本人の心の奥底にある思考様式を以下の6分類に整理し、その特徴を言い表している10語の用語を抽出して捉えています。

  1. 自己抑制と義務感:伝統へのこだわりとしきたりの尊重(家柄、家伝)、大和魂、滅私奉公、不言実行、気合い、諸行無常・諸法無我、長いものに巻かれろ、奥ゆかしい、即非の論理、忠義
  2. 社会的調和とコンセンサス:世間体、同調圧力、本音と建て前、忖度、義理と人情、温情、阿吽の呼吸、丸く収める、以心伝心、おもてなし
  3. 社会構造と階層意識:お上の社会、社会への無関心、家制度、潜在的な家長制度に従う意識、年上や上位のものを敬わなければならない抑圧的精神構造、依然として潜在的に残る男尊女卑の思考(男女平等の遅れ)、潜在的にある弱者や少数者に対する差別意識、親方日の丸、上意下達、縦割り・横並び社会
  4. 集団主義と内部調整:和を以て貴しと為す、島国根性、村社会、派閥や学閥、縄張り意識、稟議、連帯責任、誰も責任をとらない風土、出る杭は打たれる、お互い様
  5. 慣習と啓発:匠の技とものづくりの社会風土、背中を見て学ぶ、学ぶことのへの平等意識(誰もが平等に学ぶ権利がある、定型的に標準化された体系的知識の詰め込み)、黒船とGHQ(内発ではなく外圧によって変革が起きる社会風土)、寺子屋文化、和魂洋才、和洋折衷、禅、侘び寂び、勘・度胸・経験
  6. 現実と論理:明日の百より今日の五十、三方良し、利己主義、利権主義、事なかれ主義、自前主義、苦しい時の神頼み、水に流す、時が解決する、雨降って地固まる

日本人の思考様式と「隷従する行為」「排除する行為」との関係性

下図『日本人の思考様式 「隷従と排除」』は、この思考様式を言い表す用語について、心の奥底にある「隷従する」「排除する」という心理的行為との関係性を以下の基準で評価し、6分類の平均値を散布図にしたものです(評価にはChatGPTを使用しています)。

  • 日本の社会の中で通用してきたものやこと(自分たちがいる集団の中で閉ざされた文化、自分たちの習慣、慣例、既成概念、既存事業)に隷従する
    • ①隷従を強く促進している、②隷従を促進している、③隷従を促進しているとも抑制しているのでちらでもない、④隷従を抑制している、⑤隷従性を強く抑制している、の5段階で評価(①:-2、②:-1、③:0、④:+1、⑤:+2 に置き換えて平均値を求めています)
  • 日本の社会にとって目新しいものやこと(異文化、新発見、新しい考え方、新事業)を排除する
    • ①排除を強く促進している、②排除を促進している、③排除を促進しているとも抑制しているのでちらでもない、④排除を抑制している、⑤排除を強く抑制している、の5段階で評価(平均値は同様に換算したものです)

日本人の思考様式の6分類のいずれも、「隷従を促進」「排除を促進」しているという結果になっていますが、特に、「社会構造と階層意識」の思考様式が心の奥底で影響を強く及ぼしているという結果となっています。例えば、「隷従を促進」は、既成のものを受け入れる傾向が強く、また、前例や横並びで物事を判断する傾向が強いことを表しています。「排除を促進」は、新しいものの導入には慎重になり、例えば、新規事業の芽や破壊的イノベーションのアイデアを頭っから摘んでしまったりする傾向が強いことを表しています。

思考様式の諸外国との比較

下図『日本人の思考様式 諸外国との比較』は、思考様式の各用語について心の奥底で影響して、破壊的イノベーションへの意欲を削いだり生産性の向上を阻害したりしている根元的な要因につながっているのではないかという仮説の下に、以下の基準で分析し評価したものです(評価にはChatGPTを使用しています)。

  • ①ネガティブに作用するこの思考様式が強く見受けられる、②ネガティブに作用するこの思考様式が見受けられる、③これに類する思考様式は見受けられない、④ 相反するポジティブに作用する思考様式が見受けられる、⑤相反するポジティブに作用する思考様式が強く見受けられる

下図の上のグラフは6分類の各用語の評価値の平均をレーダーチャートで示したものです。下のグラフは、このうち「自己抑制と義務感」「社会構造と階層意識」の夫々の用語の評価値を日本(折れ線)、米国、イギリス、ドイツ、フランス、中国(縦棒)で比較して表示したものです。

『自己抑制と義務感』では、「伝統へのこだわりとしきたりの尊重(家柄、家伝)」をはじめとして全般的にネガティブに作用していることが分かります。『社会構造と階層意識』も「お上の社会」「社会への無関心」をはじめとして全般的にネガティブに作用しています。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

 

『日本人の思考様式』、および、『隷従と排除』『諸外国との比較』についてご興味のある方は、こちらからお問い合わせください。

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