世の中にマネジメントに関する理論や手法は無数にあります。特に、下記の論点に関しては、多くの人たちの目に触れ、レビューされ、実務に適用されてノウハウも蓄積されています。
- 大量生産・大量販売・大量消費を想定し、製品の競争戦略として変化に適応していくことを目的としたマネジメント理論
- 組織が、また、個々の従業員が、規定の業務を正しく遂行することを目的としたマネジメント理論
そこで、本コラムでは、上記分野での専門書や解説書、論文等でのマネジメント論を踏まえた上で、その先にある「創造的仕事を創造する社会」のマネジメントについてモデル化を考えてみます。
本コラムの論点 ベンチマーキング
どの分野でのマネジメントであっても、まず最初にやっておかなければならないことは、他社と比べて自社がどのような位置づけにあるかを把握することです。本コラムでは、以下の戦略に関するベンチマーキングについて示すことにします。
- 「時代が求めていること、社会が求めていること、市場が求めていること、顧客が実現しようとしている生きていく目的」と結びついた複合した価値の創造戦略
- 社会への影響力とそれを実現可能とする希少な優位性を構築していく組織戦略
複合した価値の創造戦略のベンチマーキング
複合した価値の創造戦略の具備すべき要素を以下に列挙します。
- そもそも論として、「時代が求めていること、社会が求めていること、市場が求めていること、顧客が実現しようとしている生きていく目的と結びついた複合した価値」を実現するものでなければならない
- 「目的関係性、因果関係性、相関性」を魅力あるストーリーとして表現した価値である
- 持続可能な社会の発展の追求とも等価であり、サステナビリティ社会の実現化にも結びついている
ベンチマーキングとして捉える創造戦略の視点は、以下に集約されます。
- 創造戦略の対象分野における要素技術の社会における趨勢と方向性の捉え方の明確化とその取り組みの業界における位置づけ(ランキング)
- その取り組みが創造している社会的価値の明確化と業界における位置づけ(ランキング)
- 創造戦略の成熟度(価値創造の発展段階)
社会への影響力と希少な優位性を構築していく組織戦略のベンチマーキング
社会への影響力と希少な優位性を構築していく組織戦略として具備すべき要素を以下に列挙します。
- 創造的仕事を創造しうる組織は、自ら変化を生み出す組織であり、社会/市場/顧客/組織全体を俯瞰して、リスクテイクをしながら内発的に自律し、相互に調整しながら協働する人たちが自己形成されていく組織である
- 創造的仕事を創造しうる個々人は、社会/市場/顧客/組織全体を俯瞰して、自ら問題を把握し、自ら解決手段をモデル化し、先の意思決定を前提として、相互に作成したモデルをすり合わせて、お互いに次に成すべきことを調整して決定し、試行錯誤したことをフィードバックしながら遂行していける人たちである
- 創造的仕事を創造しうる組織では、仕事の内容も仕事の進め方も、既定されたものが存在していないため、深度と進捗に合わせてフレキシブルに編成を組み替えながら、組織全体として成長していくことになる
- 創造的仕事を創造しうる組織の戦略システムは、固定的に構築されたシステムではなく、発展段階も、組織システムも、人材育成システムも、深度と進捗に合わせて、適宜、フレキシブルにデザインされて構築されていく、ダイナミックなシステムとなる
組織戦略のベンチマーキングすべき項目は、社会への影響力と希少な優位性の発展段階に集約されますが、上記の具備すべき要素のダイナミズムを把握してくものとしてデザインされなければなりません。
- 価値創造の取り組みの社会への影響力(総合評価)
- 価値創造の取り組みの優位性(総合評価)
- 組織戦略の成熟度(組織能力の発展段階)
従来のマネジメント理論との結合
当然のことながら、マネジメントは、本ベンチマーキングの結果に基づいてモデル化され、具体的な個々の分野での戦略構想(目的とゴール、バックキャスティングによる各年度の目標設定と予算化)、具体的な行動計画立の案と遂行、結果の把握と組織的なフィードバックの仕組みについて、モデル化していくことになります。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一