デフレ社会の悪夢
日本では、長らく緩やかなデフレ傾向が続いていました。企業も低価格競争に落ちらざるを得なく、そのため非正規雇用化、賃金も低く抑制されていました。企業の業績が上がらず、地位の高い役職についている高所得層の収入も抑制されてきました。研究開発や新事業も抑えられ、目先の利益が見えて回収可能な投資に抑制されてきました。貧困に喘ぎ、そこから抜け出せない人たちも増えました。地方自治体の税収も上がらず、社会インフラは老朽化は進んでいくので、社会生活全体の質も低下していくばかりでした。これは悪夢のシナリオです。
インフレ社会の悪夢
長らく続いたデフレ経済に終止符を打ち経済成長を牽引するために、量的緩和政策や低金利政策(マイナス金利政策)といった景気浮揚策は、目立った効果を上げることなく経済成長が低迷した状態が続きました。当初より目標としてきた物価上昇率2%も達成できないまま、欧米との間で生じる金利差を背景として円安が進み、輸入製品ばかりでなく輸入に頼る原材料費や燃料費の上昇による物流費も高騰し、その結果として、今日では、インフレが進んできました。政府の政策により賃金もアップしてきていますが、それでも物価の上昇幅が上回り、実質賃金はマイナスが続き、生活は益々苦しくなってきています。
やむなく賃上げした分の人件費や輸入原材料費を販売価格に転嫁した企業の業績も、値上げによって生じる買い控えによって低迷することにもつながっていきます。その一方で、輸出企業の業績は見た目で上昇し、地位の高い役職についている高所得層の収入が増える余地がでてきました。
結局、経済格差は広がり、マイナス実質賃金の低所得層の生活苦は増大していきます。これも悪夢のシナリオです。
働き方に関する破壊的イノベーションで悪夢から抜け出す
どうしたら、これらの悪夢から抜け出せるのでしょうか?
日本企業は、これまで、投資を控えて内部留保を高めてきました。しかし、経済効果の高い破壊的イノベーションが早急に必要であることは間違いありません。
そして、そのためには、破壊的イノベーションを生み出していく仕組みづくりが急務であることも間違いありません。当コラム『#265 モデルベースのコミュニケーションで日本のプレゼンスを高めよう』でも記しましたように、「モデルを構想しモデルで議論していく」 働き方に関わる社会的イノベーション を促進することが必要となります。現状あるものを維持しようという消極的な経営の在り様を、新たなビジネスチャンスを生み出していこうという積極的な経営の在り様に変えていく、経営のトランスフォーメーションにつながります。それは、まさに、社会変革をもたらす起爆剤ともなりうるイノベーションなのです。
真に必要なのは、目先の利益を確保する投資ではなく、先を見据えて社会を変革する働き方を実現する破壊的イノベーションへの投資 なのです。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一