#264 『働く』を「辛い」ではなく「嬉しい」に変革し、人口減少問題を解決に向かわせる

 筆者が新卒で入社してすぐの頃、職場の先輩が「仕事って、したくてしているんじゃない。だから、その我慢の代わりにお金がもらえるんだよ」と教えてくれました。その頃は、毎年、春闘で交通機関が止まっていました。そんな時は、そんな時だからこそ、どこに住んでいようと、遅刻せず朝礼に間に合わなければならないというのが、職場の雰囲気であり、暗黙にある規律でした。ただでさえ通勤に不慣れでたいへんな思いをしていたのに、早起きして、動いている路線を探して、色々と乗り継いでなんとか職場にたどり着いたという辛い思い出があります。

本来、働くということは、人生を豊かにするものでなければなりません

 筆者は、そんなことがあってはならないと考えています。働き盛りの貴重な時期に、人生の多くの時間を仕事につぎ込んで、それが辛い思いを我慢だというのは非生産的であり、だとすれば、企業にとっても、働く個々人にしても、不幸なことです。

 本来、人は仕事をすることによって、チャレンジもできるし、スキルも磨けるし、スキルを活かしてやりがいを感じることもできます。アリストテレスの時代から近代化の今日においても、人は「働く」ことに意味を見いだして働く存在であり、「働く」ことによって「善き存在」「より善く生きる」「幸福である人生を送ること」、すなわち、Well-being であろうとして生きています。

“ Decent Work ” は、私たち自身の問題でもあるのです

 1999年のILO(国際労働機関)の総会で提唱された “ Decent Work ” という言葉があります。一般に、日本では「働きがいのある人間らしい仕事」という訳で使用されています。世界には貧困に喘いでいる人々が多くいます。劣悪な労働環境の中で、低賃金で、酷使されて労働を強制されて働く人たちの悲惨さを思うと心が痛みます。

 日本は、経済発展し、誰もが安定して暮らしているかと言えば、必ずしも、そうとは言えません。非正規雇用で将来が見通せず、低賃金で貯金をすることもできず、毎日をカツカツで暮らしている人も多くいます。そうした人たちの悲惨さを思うと心が痛みます。

 「働きがいのある人間らしい仕事」は、その国の経済状況によって、何がそうであるかは異なってきます。しかし、「働く」ことで「善き存在」「より善く生きる」「幸福である人生を送ること」を実現できなければ、企業にとっても、働く個々人にしても、非生産的であり不幸なことなのです。

経済性ではなく経済合理性で働き方を考え直す

 経済性であれば、「働き方」は、効率の向上やコストダウンをひたすら追求するという発想に囚われてしまいます。しかし、真に経済合理性と言うならば、「善き存在」「より善く生きる」「幸福である人生を送ること」ができる、働き甲斐のある働き方をデザインすることで、仕事に前向きに取り組むようになり、自ら効率よく、自分の生きる目的のために「働き甲斐を持って働く」ことをひたすら追い求めるようになります。それこそが幸福なことであり、ひいては、企業にとっても生産性を高めるだけでなく、働く個々人にとっても「何をなし得たかという意味での、人生を通しての生産性」を高めることができるのです。

一人ひとりの生き方を実現する働き方が人口減少問題を解決する

 人にはそれぞれに様々な価値観があり生き方はあります。しかし、「善き存在」「より善く生きる」「幸福である人生を送ること」を目指して働いて生きれるようになれば、それぞれの目指す人生設計のもとに生きていくようになります。人口減少問題の解決は、ここから考えていかなければならない問題なのです。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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