#257 「本当は、私は、一体、何をしたいのだろう」 心の扉を開ける

 私たちは日常生活を送る中で、いつも、「私は、一体、何をしたいのだろう」「今のままでいいのだろうか?」と、自分自身に生きる目的を問いかけて過ごしています。

 ゲオルク・ジンメルは「橋と扉」という著作の中で『人間は、事物を結合する存在であり、同時にまた、つねに分離しないではいられない存在であり、かつまた分離することなしには結合することのできない存在だ。』と記しています(ジンメル 1909 #1 p.100)。

 「扉」は自分の暮らす空間と周りの社会を分離するものです。そして、「扉」を開いて外の世界に出かけていきます。まさにこの時が周りの社会と結合する瞬間です。

 日常生活では、あれあこれやで忙しくて、自分ではない瞬間々々を過ごしています。こうした疎外感を感じながら、その中に自分を閉じ込めて生きているのです。色々な知識や習慣、慣習が、自分はこうしなければならないと自分を追い詰めてしまっています。社会に対する怖れ、自分にはこんなことはできないという不安から自分を社会から閉じ込めています。

だから、「本当は、私は、一体、何をしたいのだろう」と問いかけても答えがでません。これは、自分と心の奥底にある思いが分離している状態です。

 「心の扉を開く」ということは、疎外され分離した自分の「心の扉」を開いて「自分と心の奥底」と結びつくことです。「心の扉を開く」ことで、自立して社会の中で生きていこうと決意することができるのです。

 人は、成功体験があり、自分自身をその中に硬く閉じ込めているものです。誰もやっていないことを何で自分がやらなければならないにか、分かっているけどやれない、などといった思いに駆られることがあります。こうした閉ざされた自分の世界にある心の扉を開くことが「本当は、私は、一体、何をしたいのだろう」の答えを見つける『初めの一歩』なのです。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

 

1.ゲオルク・ジンメル著、北川東子編訳,鈴木直訳、『ジンメル・コレクション 』、ちくま学芸文庫、筑摩書房、 1999.1.12

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