これまで欧米の個人主義に対する対立軸は集団主義、あるいは、チームワークであると言われてきました。しかし、日本においては集団主義というよりも「滅私」とした方が「個人主義」の対立軸としてより明確になると思います。
「個人主義」は長いヨーロッパにおける議論の歴史的経緯もあって一概にこうだとは言い切れないものではあります。とは言え、私は、大雑把に「自分の権利を大事にする、と同時に、他者の権利を尊重する」のが個人主義だと認識しています。
一方、日本では「出る杭は打たれる」「周りに迷惑をかけてはいけない」「自分の利害得失よりも自分達のいる組織の安寧を図らなければならない」といった同調圧力の意識が社会の中に深く根付いているように思います。その結果「忖度」して行動するのが当たり前にもなっています。特に、日本には江戸時代頃より滅私奉公の文化があらゆる階層に定着しており、「滅私」が普通の生活の中に浸透しきっていて、無意識のうちに抵抗感がを感じることなく「滅私」で思考しているように思います。
なお、「個人主義」の語法として対比できる「滅私主義」としないのは、そこに意図的な思考や個人の自由意志がないためであり、社会や組織のルールや習慣、しきたりに順応するように育てられることにより自己統制の意識が自動的にスイッチオンするといった感じなので「主義」という言葉を使うのはそぐわないからです。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一