今は、グローバル化の時代でもあるが、それ以上に、業界の壁を越えた競争の時代でもある。例えば、電機業界と自動車業界は電気自動車を通して垣根がなくなっている。というよりは、むしろ、消費者はその業界間にある境界で不便を強いられてきたのではないだろうか。
業界の壁を越えるには、技術的融合の難しさというよりは、既得権益を守ろうとする相互の業界の根深い思惑が働く。グローバル化は、その壁を打ち破ってくれるきっかけにもなる。また、ベンチャー企業は、既存の枠にはまらない市場開拓型の破壊的イノベーションによってそうした壁を打ち破っていくプレーヤでもある。
未来社会に向けた価値を創造するという視点に立つならば、敢えて、業界の壁を越えた発想に転換すべきでもあろう。自分達の商品の顧客はどんなニーズを満たすために、あるいは、どんな不便を解消するために、商品を買ってくれていうのだろうかと深掘りしていくことが必要である。
そのためには、問題や解を抽象化して高い視点から捉えて、かつ、色々な視点から広く考え、経済合理性や社会性等から善し悪しを多面的に考察していかなければならないが、そうした思考によって別の分野のニーズを発見できるかも知れない。問題意識そのものにある問題も明らかにしていかなければならない。組織内で共通に認識されている言葉の意味も定義しなおさなければならない。事業領域の融合は、そもそも、発想の転換によって生み出されるものである。敢えて目に見えない、無意識の内に規定されている知見や文化を取り除いてみることも必要である。そして、そのための思考の方法論も必要となるであろう。もしかすると、この分野にこそヒューリスティックに推論する人工知能の技術が生かされるのかも知れない。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一