日本では少子超高齢化が進展し、人口減少社会へと突入した。20世紀型の大量生産・大量販売・大量消費による高度経済成長の時代は終息し、将来や老後の生活を心配して、日々の生活必需品はより安く(デフレマインド)、不要になったものは廃棄せずにフリーマーケットで売りに出し(シェアリングエコノミー)、大事なライフイベント(晴れの日)や自分らしく生きること、心を豊かにしてくれることにだけは多少の贅沢をする(マスカスタマイゼーション)という心理が浸透し社会に定着してきた。
人々は、SNSによってマスメディアに頼ることなく多くの情報を手に入れることができ、VR技術によって、そこに行かなくても疑似的に体験することも可能となってきた。ロボットや人工知能技術が職場や家事の現場に活かされることで、辛い肉体を使う作業や非効率な知的業務を肩代わりさせることで、人々は時間や場所に拘束される労働からも解放されていく。
しかし、実世界で、自然に触れ、文化に触れる感動には、仮想世界のものには代えられない価値がある。それは、自分の感性を豊かにしてくれるという価値でもある。確かに、経済的に裕福であれば、欲しいものを買うこともでき、体験したいことを実際に体験することもできる。しかし、感性を磨くことや心を磨く知性はお金では買うことはできない。
シンギュラリティという言葉が広がるこれからの“知”の時代にあっては、感性を磨き、心を磨きうる知性を養う「こと」のクオリティが求められる。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一