ここで扱う「システムの創造」は、単に業務システムの構築のことを指してはいない。未来社会の価値を創造するという視点に立つならば、未来社会の持続可能な発展を実現していくシステムを創造すると言い換えることもできる。
それは、例えば、ロボットや人工知能技術の進化を社会の発展に役立てていくことのできるシステム、地球環境や生態系における多様性を保護するためのシステム、人々が心豊かに暮らしていく社会のシステム、組織に隷属することなく自立した個人が社会ともつながりながら働いていける働き方のシステム、経済格差を生み出すことなく経済成長を生み出していく投資のシステム等といったものを挙げることができる。もちろん、ソーシャルネットワークやコンピュータアプリケーションの活用も含まれるが、単に、道具(あるいは、実現するための方法論)をどうするかといったことではなく、人間の社会的営み、及び、経済的営みを捉えたシステムである。
そして、これらシステムをプロダクトに置き換えるならば、上記を促進し動かしていくことのできる新たなビジネスのモデリング、新たなケイパビリティの構築、あるいは、「経営革新」「組織改革」「業務プロセス改革」のフレームワークの創造といったことになる。
未来社会に向けた価値を創造するシステムを考えていく上で念頭に置いておかなければならないことは、社会的課題の解決にせよ、新たな価値にせよ、様々な要因や因果が複雑に絡み合っているとうことであり、単一のテーマに関する解(目の前のニーズを満たす商品、課題を解決するソリューション)ではなく、重層的な解が必要であるということである。そしてそのためには、問題や解を抽象化して高い視点から捉えて、かつ、色々な視点から広く考え、経済合理性や社会性等から善し悪しを多面的に考察し、具体的に抜本的な解決につなげるために深掘りをしていくことが必要である。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一