デザインとは、一般に、「意匠」「考案」「設計」といった意味合いを持っている。コンピュータを利用したプロダクトとしては、DA(Design Autometion)、CAD(Computer Aided Design)といった分野の歴史は古い。これらの応用分野は、建物や機械設備、電子機器といった構造物の設計を自動化、あるいは、支援するものである。簡単なものとしては図面を作成するソフトウェアプロダクトから、専門の設計業務を支援する、例えば、機能のシミュレーション、設計規格を満たしているかの検証、コスト積算、生産設備への製造情報の出力等を行うプロダクト、また、人間の設計の思考を自動化する高度なプロダクトがある。
意匠の分野では、グラフィックデザイン用のプロダクトやお絵かきソフトがある。人間の思考を支援するMindmapを、コンピュータを使って作成することができるプロダクトもこの分類に入れることもできる。これらの分野へは、オペレーションズリサーチの様々な手法を取り入れやすく、人工知能技術の活用にも一層拍車がかかっていくと思われる。
旧ソ連で開発されたTRIZ(Theory of solving inventive problems 、Theory of inventive problems solving)をコンピュータで支援するプロダクトは、既に数多く市場に投入されている。問題解決手法としてのデザイン思考を自動化、あるいは、支援するプロダクトもどんどん登場してくると思われる。ただ、人工知能にしても、機械には自らの存在価値を思考する機能がないため、自ら、問題を発見したり、問題を定義したりすることはできない(規定値と実際のデータの差異から問題を認識(検知)することはできる)。仮に、デザイン思考を自動化することができたとしても、それは限られた領域に特化した問題に限定されるだろう。すなわち、問題と目標値は人間が設定しなければ、デザイン思考のプロダクトを動かすことはできない。もし、デザイン思考を自動化しようとするなら、まずは、機械に何らかの目的を自ら創造し、それを実現しなければならないという自らに使命を課して認知できる様にしなければならない。
将来的には、抽象化された目的と、知識ベースや人工知能の深層学習に必要なパラメータを紐づけて、目的に対する具体的な目標値を設定した上で人工知能を起動し、当該目的を達成するためのストーリーやプロセスを提示できる様にすることは可能であろう。また、その採用の可否の経緯や実施結果が知識ベースや深層学習機能にフィードバックして、自律的に機械が賢くなっていく仕組みを実現されていくこともできると思われる(「知をつなぎ協創するネットワーク」参照)。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一