ケイパビリティは経済用語である。生産性の概念に関連し、競争優位となる差別化された生産を実現しうるかという能力を示す概念である。そしてそれは、そこで働く人たちの高い品質を実現しうる能力や技能、生産効率、プロセスの処理能力で評価される(スタティックケイパビリティ)。一方、経営環境は常に変化していくことから、変化に即応する能力、すなわち、管理能力やプロセスの再構築能力等もケイパビリティとして挙げることもできる(ダイナミックケイパビリティ)。
しかし、社会が近代化(モダニズム)から脱近代化(ポストモダニズム)に移行して多元主義が浸透してきている中で、近代化の時代を背景として形成されたケイパビリティには視野の狭さを感じる。また、変化の激しい今の社会にあって、既存事業や漸進的イノベーションにおける生産性でケイパビリティを考えて良いものだろうかという疑問も生じる。また、シェアリングエコノミーの発展により、単純に生産し販売することだけでケイパビリティを評価することにも矛盾が生じるし、フリーランスをもっと活用する時代ともなれば、そもそも、組織のケイパビリティという概念も崩れていく。
当面は、ケイパビリティティという概念を拡張することでも良いかも知れないが、IoTを駆使した生産設備の導入、ロボットの職場への浸透、ソーシャルネットワークと連動した人工知能技術の活用等、未来社会においては根本的な発想の転換が必要になってくると考えられる。
将来のケイパビリティは、未来社会に向けた価値を創造しうる能力(すなわち、ディスラプティブ・イノベーションを興し得る能力)、データ分析能力、人工知能やロボットの知性や処理能力、シェアリングエコノミーの時代に即した概念、外部リソースをダイナミックに活用していく能力(フリーランスの動員力も含めたバーチャルな組織の能力)を加味していかなければならない。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一