21世紀の経済成長の基盤となる産業は、IoTを活用して生活に利便性を向上させる産業、ロボットや人工知能技術を活用した産業、あるいは、これらを融合させた産業であろう。また、これまでの産業構造は崩壊し、例えば、電気と自動車が組み合わされた電気自動車、そしてさらにそこにGPSといった情報通信技術と人工知能技術を組み合わせた自動運転技術といった分野での新たな産業化は既に進展してきている。ロボットや人工知能技術は労働環境や生活環境、医療技術や介護サービスを変容させる新たな産業基盤となる。ナノテクノロジーの素材に関する新たな技術は、あらゆる産業の変革を促す基盤になっていくに違いない。
これら新たな産業化基盤は経済成長の基盤ともなるが、そもそも人口が減少していく超高齢社会は経済縮小の社会であり、大量生産・大量販売・大量消費のビジネスモデルは成り立たない。むしろ、多様化し個性が重視される社会にあって、人々が自分らしい生き方や心豊かさを追求し満足できる生き方を実現していくための基盤となることが求められる。
これまでの産業は合理性の追求という発想によって成り立ってきた。そこでは、イノベーションにより顧客を創造し、業務改革によって効率を向上させ低コスト化を図ることで競争優位性を実現し、あるいは、個性を大切にして自分らしい生き方を追求できる高い品質を提供することによって差別化する戦略を実現し、企業の生産性を高めていくという指標が全てであった。
多元化社会の進展によって、また、世界的な経済格差社会の問題がクローズアップされるようになり、利己的な儲けを追求する経営は忌避される様になってきている。企業は、合理性の追求ばかりでなく、社会の持続可能な発展の実現に目を向けなければならない。合理性の追求はマーケットインの発想を生み出したが、社会の持続可能な発展の視点に立ったプロダクトアウトの発想への回帰も必要となっていく。そして、おそらくはその先に、ソーシャルインの発想も必要になってこよう。ここで、ソーシャルインとは、製品の企画段階から社会の持続可能な発展へのデザインコンセプトを採用し、その製品の仕様として社会の持続可能な発展に関わる役に立つ機能を織り込み、社会の持続可能な発展につながる意識のある顧客ありきの販売戦略をとっていくことを意味する。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一