2010年頃以降、世の中では、脳科学や人工知能に注目が集まりだしてきた。レイ・カーツワイルがシンギュラリティの可能性について主張してきたことへも関心が高まってきている。
現実的にも、人手不足を解消するためにロボットを活かしていくことが政策的にも考えられており、モビリティにおいても電気自動車と自動運転への技術革新が急速に進んでいる。脳科学は医療分野の一つとしてだけでなく、脳科学と人工知能とロボット技術は対をなして進化していくものと考えられる。
ロボットがより進化したロボットを創り出し、人工知能がより高度の知能の人工知能を生み出すことは原理的にはなさそうであるとしても、技術の進化が未来社会に及ぼす影響は、技術革新が起こって社会が変わってはじめて認知されることもある。アシモフのロボットの3原則も発展させていかなければならない概念であろうし、人工知能が経営する会社の製品が原因で起きた事故について誰が責任をとるのかといったことも想定しておかなければならないのかも知れない。技術革新と同時に社会システムも進化させ、社会風土に及ぼす影響も社会学や哲学、心理学等といったリベラルアーツによって意味づけをしていくことも必要である。
脳科学や人工知能は人類にとって刺激的な話題でもある。未来社会の持続可能な発展を考えていく上では、目の前の困りごとの解消や社会的課題の解決ばかりでなく、ずっと先の未来のあり様を見据えて取り組んでいかなければならない。日本人は、とかく、ビジョンを描くことが下手だと言われるが、人間には誰しも未来を夢見る能力が備わっている。低い生産性を改善しなければならないといったことばかりに囚われず、これからの社会にあっては、ビジョンを描くことから逃げることなく、むしろ、積極的に取り組んで未来の世界を築いていくべきであろう。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一