超高齢化し人口減少社会にあって社会保障費が増大していく中で、プライマリーバランスも悪化し続けている。まさに、国や地方の財政破綻のリスクが高まっている。
かつては、大規模な土木事業の誘致は政治家の業績と認められていた。しかし、財政が悪化していく状況にあって、大規模な土木事業、巨大施設の建設、イベントを誘致しても、政治家の業績として評価されない時代となってきている。むしろ、小さな投資で社会の課題を解決し、経済を活性化させ、経済成長に導いていく政治家の知恵が試されている。世界的に見ても、オリンピックや万国博といった大きなイベントの誘致は、次第に、忌避されてきている。
投資回収の見込みのない大規模な公共施設の建設は税金の無駄使いである。しかし、日本は地震や水害といった災害の多い国である。こうした防災や減災のための土木事業に対する大規模な投資は必要である。こうした災害は、人命を奪い、インフラ設備や家屋を破壊し、工場や田畑を破壊し、多くの情報を消失させ、商品の価値も奪い去っていく。発災確率を考えると無駄な投資と主張する人もいるが、その損失額の大きさと比べ防災や減災への投資は小さく、是非もなく投資すべきであろうと考えられる。しかし、財政難から防災や減災に投資する資金がないということが問題の本質であろう。
また、高度経済成長期に建設した高速道路や一般道、新幹線、橋、水道網は老朽化して、その改修のためのコスト負担が財政上の問題となっている。老朽化を放置して生じた事故は、明らかに人災である。地震や水害が発災した時の被害も大きくなる可能性もある。また、発災時の復旧に時間がかかることも二次災害を引き起こす要因ともなる。
防災や減災のための技術革新、耐用年数を迎えた公共設備の改修コストを下げる技術革新、発災時の復旧を早めるための技術革新が望まれる。脱大規模社会資本の社会に向かっていく時代にあって、あるべき投資とは、その投資回収が可能であるからというイベントへの投資やそれに付随する投資ではない。確かに、イベント投資は一時的な経済を活性化するカンフル剤にはなるが、防災や減災のための技術革新、耐用年数を迎えた公共設備の改修コストを下げる技術革新、発災時の復旧を早めるための技術革新に投資すべきであることは明白である。そして、そうしたことにコンセンサスが得られることも必要であり、災害に強い国づくりという社会的意識を高め、文化を醸成していくことが重要である。
防災や減災、耐用年数を迎えた公共設備の改修コストの低減、発災時の早期復旧化に取り組んでいく企業は、未来社会の目に見える価値を創造する存在価値を高めていく。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一