2011年にドイツでIndustry 4.0(第4次産業革命)が明らかにされて以来、日本でもSociety5.0が推進されている。Society5.0で言う未来社会のイメージとは、①人口減をものともしないスマートな社会(一人当たりGDP倍増、人口制約からの解放)、②高齢者や女性等、あらゆる個人が活躍できる社会(個人の能力発揮最大化、年齢・性別からの解放)、③サイバー・フィジカルいずれも安全・安心な社会(犯罪・災害・サイバー攻撃被害ゼロ、不安からの解放)、④都市と地方がつながり、あらゆる場所で快適に暮らせる社会(都市と地方のQOL格差ゼロ、空間制約からの解放)、⑤環境と経済が両立する持続可能な社会(資源・エネルギー利用の無駄ゼロ、環境・エネルギー制約の克服)である。
また、Society5.0の位置づけは、超スマート社会(IoT、人工知能の活用、バイオテクノロジーの進化)、21世紀初頭以降におけるサイバー空間と現実空間の融合による社会全体の最適化(全体最適化)、新たな資源(データ)の活用、様々な制約から解放された世界、複雑化する社会課題の解決、社会・国民の豊かさの実現とされている。
ネクスト産業革命世代の社会を考えるということは、このIndustry 4.0やSociety5.0のその先にある未来社会の価値を描くということであり、そこから見えてくる世界を実現していく段階としてIndustry 4.0やSociety5.0を捉えることが必要になる。それでは、その先にある社会とはどんな社会かというと、概ね、以下の様なると想像される。
- 成熟化社会は更にシェアリングエコノミーが進展した社会となり、大量生産・大量販売・大量消費ではなく、単なる利便性のみならず社会的課題解決につながる新たな価値を顧客と協創していくマスカスタマイズの時代となっていく。
- VR、AR、MRの進歩により人間は仮想現実の空間に囲まれ、端末に障ることなくいつでもどこでもコンピュータにアクセスできる様になる。
- AIやロボットと役割分担することによって、人は、時間や場所に拘束される仕事から解放されて、より時間的にゆとりのある生活を送くれるようになる。その結果、人はより自分らしい仕事に集中できるようになり、また、個性を生かした創造的な仕事を求める様になる。
- 企業は、経済合理性の発想によらず、ウェルビーイング、クオリティオブライフの発想に根差した産業への転換を図っていかなければならなくなる。
- そこで働く人たちも経済的豊かさや儲けを競うのではなく、また、自己実現のみならず、自己を超越した、誰もが心豊かな暮らし方ができる寛容な社会を築いていくための知恵を学習していく様になる。
- 働き方自体も、多様な社会的課題に囲まれている社員が社会とのパイプ役を担って、自発的に自律して働いていく様になる。
これからの社会では、未来社会に向けた価値の創造という視点に立って事業を考えていかなければならない。我々は、ついつい、ICTの進化がもたらす未来像を描きがちであるが、「ネクスト産業革命世代の社会になる」を描くには、社会の発展や個人の行動の仕方と意識の成長の過程も包含して考えていく必要がある。Industry 4.0やSociety5.0は、言わば、技術革新やその社会への普及の過程を描いたものであるが、その先にある「ネクスト産業革命世代の社会」への発展につながっていくものとしての道筋を描いていかなければならない。
一般社団法人日本経済団体連合会、『Society 5.0実現による日本再興 ~未来社会創造に向けた行動計画~』、2017年2月14日
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一