未来社会の持続可能な発展の担える次なるエネルギーはどの様なものであろうか。
今、世界の潮流は明らかに再生可能エネルギーに向かっている。未来社会を支えるエネルギー産業の基盤としての太陽光発電や風力発電に関する技術は、それを推奨する国のエネルギー政策の下で発展し、原子力発電をベースロード電源として大きな比重を持たせている日本は遅れをとっている。東日本大震災の際に発生した原発事故以降、新規の原発建設に国民のコンセンサスは得られず、運転開始から40年を超えた原発の再稼働に関しても安全対策を施すためのコストを考えて廃炉に追い込まれる原発が増えていく。こうした状況にあって、当然のことながら、原子力発電は衰退せざるを得ないエネルギーである。地球温暖化を阻止するために化石燃料を使った発電設備も減少させていかなければならないエネルギーである。メタンハイドレートにしても、日本近海に多く埋蔵されてエネルギーを支える資源として期待はされているものの、二酸化炭素以上に温暖化率の高いメタンガスの利用であることを解決していかなければならない。
原発はコストのかからないエネルギーとされるが、その安全性の不安により原発を設置している自治体には、様々な経済的援助が施されてきたこともコストと考えれば、それでも原発は安価なエネルギーだとすることには議論を要するに違いない。廃棄場所も決まらない核廃棄物の処分の費用、廃炉の費用をすべて積み重ねていくと、ライフサイクルを通したトータルコストという面でもコスト比較をする必要がある。
未来社会にとっての価値を考えるならば、新たなエネルギー技術開発分野で国際競争力を高めて、産業としての振興を図っていくことが望ましい。この新たなエネルギーに関する技術には、蓄電技術やロスの少ない送電システムも含まれる。発電ばかりでなく安価で効率的なエネルギーの活用技術を含めた産業分野全体を新たなエネルギー産業を捉えて、社会全体として発展させていく取り組みが必要である。原発立地地域の活性化策の一環として、地域の産業基盤となる様にいち早く新たなエネルギー産業分野への転換を図り、雇用を創出していくことも必要であろう。
原発立地地域における再稼働の是非は選挙の争点になるが、原発自体は廃れていくエネルギー源であり、今時点では地域の雇用や経済を支えてはいるものの、将来的には確実に、地域産業の転換を図らなければならない時が来る。その地域における未来社会の持続可能な発展を考えるなら、今から産業基盤を転換していく必要があるのではないだろうか。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一