ネットワーク技術の普及により電子商取引が企業間取引だけでなく一般家庭にも浸透した。交通網が整備され物流網が進化し、交通手段の多様化により人の移動も様々な用途に応じて選択できる時代となっている。
人手不足に向かう時代にあって、電子商取引の数量の急速な拡大は物流網のキャパシティを超えはじめている。また、地方の過疎化が進み、点在する集落や民家に隈なくモノを届け、人(特に、高齢者)の移動を確保することの公共的な負担は大きい。日本は地理的に地震や水害のリスクの高い地域であり、災害が発災した時の緊急物資の輸送手段の確保、被災者の救援に向かう緊急車両が通れる複数の経路の維持にかかる社会コストも大きい。超高齢社会となり社会保障費が増大しプライマリバランスが悪化する一方の財政状況にあって、これら莫大な費用を賄うことはどんどん難しくなっていく。
物流における人手不足問題は、無人運転技術を確立することによりある程度は緩和される。交通渋滞による非効率性はGPSと通信技術の活用により科学的に解決することも可能であろう。過疎地における高齢化が進む住民の足も、無人運連技術や乗り合いタクシーへの規制緩和で解消されていくだろう。緊急物資の輸送にはドローンも活用される様になるだろうし、人を運べるドローンの開発も進められている。大事なことは、技術の進歩を急ぐだけでなく、法整備の充実も並行して進めていかなければならない点である。また、そうした新しい技術を社会が受け容れる環境を整えることも見逃してはならない。
仮想現実(VR Virtual Reality)、拡張現実(AR Augment Riarlity)、複合現実(MR Mixed Reality)、代替現実(SR Substitutional Raality)の技術により、時空間を超越した空間を体験することができる様になっていく中で、電子商取引取引の未来像と無人運転車両網の整備、脱化石燃料としての電気自動車と燃料電池車の活用、緊急時ばかりでなく平時にも活用できるドローン、過疎地における乗り合いタクシーや自治体等が運営するコミュニティバスの活用、リニアモーターカーと格安航空の棲み分け、新幹線網と航空路線の棲み分け、海外からの観光客を誘致するばかりでなく地方へと誘う交通手段の整備、格安バス路線のあり方、都市における水路の活用など、限られた財源で豊かな未来を実現させていく社会全体としての最適解を追求していくことが必要である。そのためには、まず、未来社会におけるモビリティのビジョンを描いていかなければならない。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一