ポストモダンの経営モデルにおいては、社会的課題のリスクを負いながら生きている従業員の一人ひとりが社会的価値創造の知の持ち主となり、企業の目的に共感し、一体感を持ちながら協創し社会的価値を創造していく。
しかし、そのためには、従業員の一人ひとりが自立していること、自らの生きる目的を明確に意識して企業の目的に共感し、自らの目的を実現するために内発的に、かつ、自律して行動できていることが前提として必要となる。それはまた、自分勝手に行動するということではなく、自己実現の欲求を超えた意識での協働、すなわち、自分の自我や主張したいことに囚われず、他人の感じていることや考えていることに傾聴し、全体性を捉えて丁度良い解決方法を見出して行動するということでもある。
日本においては心遣いや気遣いといった心情が組織行動の中に埋め込まれている。そうした心情は、個人主義である欧米においては、ビジョンロジックとしてより高い意識とみなされている。一方、忖度は、欧米でも日本でも起こり得る行動である。それはあたかも他人に向けられている様にも見えるが、その根源には、自己の保身が隠されている場合が多い。忖度で運営されている組織は危うく、不満が組織の中に鬱積していくことになる。
企業の目的の実現に向けて協働するというばかりでなく、高い意識を持つ個人が内発して自律行動する組織は、創発して新たな価値を生み出していくことも可能であろう。それは、生産性を高めるばかりでなく、むしろ、創造性の高い組織を形成していくことにつながる。ポストモダンの経営モデルを超越して、21世紀に築いていかなければならないクリエイティブな組織は、こうした高い意識の個人が創発して価値を創造していくことのできる組織である。また、そうした組織を築き上げて価値を創造する経営は、ポスト・ポストモダンの経営モデルと言えるであろう。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一