様々な社会問題は、社会構造の劣化によって引き起こされる場合が多い。現在の趨勢に適合しうまくいっている様に見えることも、社会全体が次第に変化していくと様々な矛盾が露呈し、うまくいっていると思われてきたことが根源となって、新たな社会問題を引き起こしていく。高度経済成長期には、公害が社会問題を引き起こし、バブル経済を生み出した。金融経済への偏重した人々の行動は、経済格差問題や貧困問題が引き起こしてきた。
社会問題を解決するには、また、一人ひとりの現実の暮らしと豊かに暮らしていきたいという切ない願いの間にあるギャップを埋めていくには、どの様な社会的課題が潜んでいるか具体的に抽出し認識し、何から如何にして解決していかを考えなければならない。そして、そのためには、政治や行政だけではなく、一人ひとりが意識して社会全体に重たく垂れこめている様々な社会問題を無くしていかなければならない。
社会構造をどの様に捉えるか。例えば、歴史的に積み上げられてきた政策やそこに醸成された政治風土、官僚機構やその構造的劣化、既得権益に固執する業界、短期的な利益を追求する企業行動や投資家の行動、リスクテイクができない金融機関、個々人の心の内にある社会的ジレンマ問題など、社会構造の捉え方は視座する視点によって様々ある。しかし、その視座する視点を明確にしなければ社会の現実と理想をどの様に捉えるかも定まらず、社会的課題を浮き彫りにすることはできず、未来をどの様な社会にしていくかというビジョンも描けない。社会構造を変革して社会的課題を解決していくためには、まずは、視座する視点を明確に定めることから始めなければならない。
ここで注意しなければならないことは、今、目の前に顕在化して見えていることに視点を当てて、今ある社会的課題を解決しさえすれば良いという訳ではないということである。社会問題の真相にある構造的問題を暴き出し未来社会のあるべき理想を描いていくこと、未来社会に実現すべき理想と今現在における現実とのギャップを社会的課題として認識し、解決への道筋を描いていくことこそが、真の意味での社会的課題の解決と言える。そして、真の意味での社会的課題の解決こそが、ディスラプティブなイノベーションにもつながっていく視座すべき視点である。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一