ネットワーク社会にあって、情報や知識は社長も社員も同様に得ることができ、また、多様化する社会的ニーズについて、社長も社員も社会の中で平等に感じ取り、さらには、社員が社長以上に、具体的な社会的課題に直面して深く思い悩み、自ら解決しながら暮らしていることだってある。組織にとっての本質的な多様性とは、雇用の多様性や昇進の多様性ばかりではなく、社会的な視点でものごとを様々に捉えうる組織であるかである。
企業の中で組織が有機的に活動していくために大事なことは、社長が社会的な視点で未来社会の価値を創造するビジョンを描けているか、また、社員がそのビジョンに共感し自律的に行動できるかである。組織にとって大事なことは、多様性ばかりでなく、社長と社員が一体性を持って自律的に行動できるかである。
人口減少社会にあって労働力を増やすためは、雇用の多様性や昇進の多様性が求められている。そして、そうした人事制度の有効性を担保するのが自己実現だとされてはいる。しかし、自己実現ができる企業が良い会社であり、未来社会の価値を創造しうるのかという疑問も生じる。むしろ、未来社会の価値を創造するビジョンのもとで、上記の様な多様性と一体性を持って、その企業で働きたいと思える仕事、社員が自分の働ける環境で働ける仕事、自分の働き方で働ける仕事に就けるという多様性を増やし一体性を確固たるものにしていくこと、その結果として社会の発展に貢献できていくという満ち足りた感覚を得られるようにすることが重要である。
これからはロボットや人工知能が職場に進出してくる。社員が自分の働ける環境で働ける仕事、自分の働き方で働ける仕事以外の仕事、すなわち、時間や場所に拘束される形式知に基づく定型的な仕事はロボットや人工知能が担い、人は自分の働ける環境で働ける仕事、自分の働き方で働ける仕事を担う様にならなければならない。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一