今、新たな物流の方法としてドローンや無人運転車の開発が進められている。
人口減少化にともない運転に携わる事業者の人手不足が加速化している一方で、過疎化した地域へ生活必需品のどう配送するかといった問題も顕在化してきている。ドローンや無人運転車は、どちらもこうした相矛盾する問題の有効な解決策として考えられている。
技術者は、自分たちの専門分野をとことん追求するものである。経済原理に基づけば、技術競争によりお互いに切磋琢磨することで、より磨かれた技術へと成長していくものであり、市場もより良いものを選択していくことになる。当然のことながら、劣る技術は淘汰されていくことになる。
しかし、ドローンや無人運転車の開発がこうした経済原理だけで進められて良いものかは疑問である。グローバル経済競争が激しくなる中では、優れた製品もすぐにコストダウンの憂き目を見ることになる。人口減少化に対して何も手を打たなければ、経済成長の停滞どころか経済規模の縮小にもつながっていく。開発に投入できる人的資源にも、投下できる資金にも限界があり、それが徐々に縮小していく。経済原理や競争原理だけで、持続可能な仕組みで技術開発をしていけるとは考えられない。
今、最も大事なことは、未来社会の発展に貢献する技術開発は何かを考えることである。
社会的課題解決のイノベーションを考えていくことは必要なことであるが、そうした先にある未来社会のあり様をデザインすることも大事なことである。デザインは、納期・品質・コストの追求でもある。いつまでに、どんな未来社会を、限られた資金の中で実現していくかを考えていかなければ、日本の未来社会の発展はない。さもなくば、グローバル競争の中で日本という社会は、どんどん埋没していってしまう。
ドローンは、どんな社会的課題を解決して新たな未来社会を築いていくのか。無人自動車は、どんな社会的課題を解決して新たな未来社会を築いていくのか。未来社会へのグランドデザインの下で、こうした技術の未来像を描き、そこに限られた人的資源や限られた投下資金を振り分けていくべきであろう。そしてそれは、政治に携わる人たちに求められる未来社会のデザイン力でもあろう。利権によらない未来社会の構想力が試されるのである。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一