先に、「ストーリー化のテクノロジー 暮らしの中のストーリーを描く」で暮らしの中のストーリーを描く上での様々な切り口や影響を及ぼす要素について分析した。
今回のコラムでは、暮らしの中のストーリーを描くためのフレームワークについて示すことにする。
ここで、注意することが二つある。
(1) 我々がビジネスで暮らしの中のストーリーを描く際には、小説やエッセイを書く訳ではないから、商品を提供する側に視座して、日々の生活の中で暮らしていくイメージをイキイキと描いていかなければならない。
(2) 商品やサービスの提供者の思いで、暮らしの中のストーリーを描いてはならない。あくまでも、顧客の日々の暮らしの中から商品の存在意義やプロモーションによる訴求の影響を考えなければならない。
また、どんな消費活動を切り口、想定する消費生活者の絞り込みも必要である。
暮らしの中のストーリーの中心は「実現したいこと」であり、「場の実現、スタイルの実現、シーンの実現」である。そしてこれらは、ライフスタイル、ライフイベントの過ごし方に依存し、逆に影響を及ぼす。そこに「心の中の商品の存在感(持っていることで感じる価値)」「購買の意味づけと価値づけ(買うに際して納得できる価値)」「お金と時間の使い方」「感性と心理」が関わり『暮らしの質』をその人の趣向に合った内容や生活レベルに高めている。そこに外部からのムーブメントやトレンドがブレンドされ、商品やサービスの提供者からの「商品と場のコーディネーション」「プロモーション」といった情報が加味されて「実現したいこと」が具体的に現れ実現して行くことになる。
これらの相互に関係し合いつつ、必ずしも一定の決まりで実現されていく訳ではない。緩くつながりながら、状況(コンテクスト)の流れに身を任せながら進んで行く。そこでは、その日の出来事や家族との会話で、例えば、「家族の健康を気遣う買い物」や「ちょっとリッチな外食」の情景が繰り広げられていく。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一