商品の安全・安心は当然のことである。しかし、どんな機能を開発しようとも、どんな品質を実現しようとも、企業が顧客に好まれていなければ商品は買われない。すなわち、嫌いな企業の商品は不買される。ブランドイメージというよりも、心の奥底、深層での共感がなければ選ばれることはないというのが現実である。
例えば、消費者にとって最も身近である「食」について考えて見ると、『食の安全・安心』に関わるトレンドキーワードとして、「食品添加物、遺伝子組み換え食品、トレーサビリティ、原産地、生産地、食物アレルギー(内容量の成分表示)、賞味期限・消費期限の表示、有機栽培、野菜工場、ハラル食品、食中毒、風評被害、産地偽装問題、異物混入問題、健康食品、機能性食品、食育」がある。また、『食料問題』に関わるトレンドキーワードとして、「食のマイレージ、食料自給率、地産地消、自給自足、低価格の食品の輸入、高付加価値食品の輸出、国産食料生産の競争優位化、食の輸出、食文化の輸出、高齢化による食料生産力低下、輸入食品に頼らない食生活、もったいない、節約、小分け、廃棄食物の削減、食料資源の枯渇、養殖、フードバンク」がある。これらについて厳密に配慮しておかなければ、消費者にそっぽを向かれることになる。
これらトレンドキーワードへの取り組みこそが 『社会との関わり』 である。
もちろん、これら全てに取り組むことは無理かも知れない。しかし、何を重視し、何を優先して取り組んでいるかということこそが、企業のイメージにつながるのである。そして、最も大事なことは、企業としての理念や言葉だけの取り組みではなく、商品やサービス、サプライチェーンから消費者に届くまでの流通過程の全て工程でこうした配慮が浸透しているということである。
機能や品質を追求するのは供給する側の企業の思い入れが強くなり、ある意味で自己満足に陥りやすい点でもある。顧客に選ばれるイメージを創り上げることは、顧客と対話(ダイアログ)して共感し、共感するだけでなく一緒に欲しいと望むモノやコトを創り上げることであり、共創のプロセスが重要である。
顧客が何を求めているか、表面的なことではなく、その先、すなわち、「顧客の先にいる人とのために」「今ではなく将来のために」を一緒になって誠実に考えるプロセスこそが “顧客に選ばれるイメージの創造” につながる。そして、そこには『社会との関わりをデザインする』という設計思想がなければならない。さもなければ、薄っぺらな同情や売らんがための親切としか受け取られないだろう。
最近、ビッグデータ、データサイエンス、データ分析、統計解析といった用語がメディアを賑わせている。顕在化したこと、そこに隠された真相を見つけ出すことも必要だが、それ以前に、顧客の望むことを見透すための深い洞察が必要なのである。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一