サステナブル の視点に立つということは、今、目の前にあることだけでなく、その底流に流れている潮流(ムーブメント)を捉えてその先に起こる未来社会の持続可能な発展を思考できるようにすることが求められるということでもあります。 だからこそ、サステナブル の実現に向けてその先を見透した計画を策定するには、カレントなテーマについてのうわべだけの思考ではなく、ものごとの論点を、広い視点で多角的に捉え、深掘りして本質を追究し、高い視点で大局的に思考できるロジカルシンキングの手法が必要 となります。
サステナブル を中核に据えて「社会の持続可能な発展」と「企業の持続可能な成長」をともに実現する新たな発想に転換し サステナブル・イノベーション を興していくには、これまでの思考方法とは異なる新たなロジカルシンキングの手法を構築しなければなりません。
当社では独自に『社会発展のシナリオ』を構想するための思考方法論 Trigonal Thinking (TM) を開発しています。本「サステナブルへの発想を深めるロジカルシンキング」でも、この Trigonal Thinking をベースにロジカルシンキングに特化した 『問題解決シナリオの創出技術 “SET : Scenario Emergence Technology” 』 という知的思考の方法論を開発し提供しています。
アイディアを列挙する
アイディアを抽出するには、一般的に、従来からのワークショップや最近のワールドカフェでのブレインストーミングで参加者のアイディアを引き出したり、エスノグラフィで実際の行動観察から新たな知見を得る等の手法が用いられてきました。また、ミニ・マインドマップを活用することも有効な手段となります。
Trigonal Thinking (TM) においても、同様のアイディア出しの手法を用いますが、当社では、「サステナブル・ダイアログフォーラム」というポジティブにアイディアを出し合う創意工夫の場を開設しております。
ブレインストーミングによって案出ししたアイディアの中には、、各個人の漠然とした思いが述べられただけに過ぎないものがあり、そこに何らかの価値観や意図が含まれます。また、他のアイディアから芋づる式に引き出されたアイディアも含まれます。例えば、同調して、相乗して、派生として、類推として、反論として、拡大深化として等、様々です。
そこで、こうした技術的な課題を解決するために “SONOSAKI PLANNING (TM)” では、その先を見透した計画策定の実現を目指して、BKN : Business Knowledge Network という Thinking Base (思考するためのビジネス知識データベース)を組み込んでいます。 この Thinking Base (思考するためのビジネス知識データベース)を探索することにより、単にその場での思いつきの偏った、あるいは、抜けだらけのアイディア出しではなく、MECE (Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:ダブり無く、漏れなく)によるアイディア出しが可能となります。 また、知識を様々に閲覧することにより、セレンディピティ(知識の新結合)や知識の創造(アブダクション)も可能となります。
問題認識、目的意識自体にある問題の深掘り
アイディアを列挙していくに際し、そもそも、問題認識や目的意識に不足があったり、外面的に事象しか見ていなく内面に隠された本質を捉えていなかったりという場合が多くあります。 そこで、問題認識、目的意識自体にある問題の深掘り が必要になります。 そのために具体的には、次に示す 細分化、正規化、レイヤー化 の手法を用います。
細分化、正規化、レイヤー化
思いついたばかりの問題意識や目的意識には、大まかな直感、抽象的概念、具体的事象、こうすべきという方法論等、様々なレベルのものが含まれます。細分化 ではこれらの思考を細分化し、正規化 ではそこに内在する複数の思考をあぶり出し独立した個々の思考として明確にしていきます。レイヤ化 は、アイディアの細分化(詳細レベル)としてではなく、抽象化レベルを定義して考えを整理していくロジカルシンキングになります。この思考により、サステナブル のコンセプト段階のものか、具体的な施策段階のものかを明確にすることができ、その各レイヤの特性に応じた様々な軸を考察し発見することが可能となります。 ここで大事なことは、考えを整理する軸が、レイヤごとに個別にデザインすべきものか、レイヤを縦串に刺した共有の軸としてデザインすべきものかを見極めることです。
抽出したアイディアを実現していくために、「そうなるには、どうなっていなければならない」「そのためには、何をしなければならない」という項目(施策)をロジカルシンキングによって洗い出して参ります。 また、この思考段階でも、上記の「細分化-正規化」が必要になることもあり、「多面的に捉えた場合の各側面」に分解することも必要になってくることもあります。 この場合は、個々の細分化されたアイディアについて、あるいは、各側面から、「そうなるには、どうなっていなければならない」「そのためには、何をしなければならない」というロジカルシンキングを展開していくことになります。
多方向から眺め、幹と枝を選り分ける
サステナブル の視点から主題や論点を整理して幹と枝を描き出します。
Trigonal Thinking (TM) とは、経営の視点だけでなく、社会の視点、一人ひとりの暮らしの視点を組み合わせて考えていくことになります。 BKN : Business Knowledge Network を用いて知識を探索する過程によって、この組み合わせの思考方法が自然に身に付きます。
していく思考方法です。
この論理思考では、様々なキーワードを幹と枝の構造に描いていくことになりますが、どのキーワードを幹とし、どのキーワードを枝とするかといったことには洞察力が必要であり、未来に向けて巻き興していく イノベーション の姿や価値を決定づけると言っても過言ではありません。 また、幹となるキーワードを上層に辿っていくと、そこには、次に示す「考えを纏め上げる基軸」に辿り着くことにもなります。
また、ひとたび構築した幹と枝の体系は静的なものとは限らず、普遍的な部分と移ろい変わっていく部分が混在します。多様性のある今の社会にあっては、静的と動的にに変遷していく状況を、その系全体として適確に描いていけなくてななりません。幾つかの変化が相関して他の変化を引き起こしていく様を、システムダイナミックスの思考方法を用いて表現することも必要です。
考えを纏め上げる基軸を定める
ロジカルシンキングの過程で様々な視点でのアイディアが生成されますが、それを纏め上げていく軸が必要となってきます。それは、ブレルことのない軸であり、全ての活動の基軸となるものです。
しかし、生成されたアイディアは、ともすると、突飛な暴論かも知れません。しかし、既存の事業から発想を転換するという意味では、それを「突飛な暴論」として安易に捨て去ってしまう、また、経済的に儲からないからという理由で一蹴されることもあります。しかし、常識や通念、既得権益、経済性によっていては機会ロスになるかも知れません。
1950年代に開発されたSWOTやPPTといった手法を例にしてみるとイメージがわきやすいと思います。例えば、SWOTでは、「強み-弱み」の軸と「機会-脅威」の2つの軸を設定して競争とリソースに関する戦略を複合的に考えて参ります。PPTでも、事業の成長率と市場占有率という2つの軸を用いて、どの事業からキャッシュを調達してどの事業を育てていくかという戦略を策定していきます。サステナブル を中核に据えて「社会の持続可能な発展」と「企業の持続可能な成長」を伴に実現していこうという場合でもこれら手法は有効です。しかし、社会性を考える上では多様な価値を二律背反(二項対立)の構図で考えても良いのかという疑問が残ります。また、そこには社会的価値に関する軸は含まれていませんし、新たな軸を創造することが必要になってきます。そこで、大きな役割を果たすのが、当社が提唱する Trigonal Thinking (TM) です。
上図では、オットー・シャーマーが「U理論」(*1) の中で提唱している “Seeing – Sensing – Presensing” についても付記しています。考えを纏め上げる基軸 には、論理思考を超越した心の中で感じて昇華されてくるものがあることを忘れてはなりません。
【参考文献】
- C・オットー・シャーマー, 「U理論 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な『変化』を生み出す技術」, 英治出版、2010.