新たな産業構造が財政健全化と社会保障費の負担軽減となる
ふとした思いつきや単発のアイデアを事業化することは可能である。しかし、それでは社会の発展にはつながらない。社会の発展を願い実現させていくためには、社会システムを進化させること、社会風土を変容させていくことの本質を考えていくことが必要である。そのためには、顧客のニーズを満たすだけでなく、ニーズの目的やニーズが生じる背景、社会に広がっている習慣や文化にも思いを巡らせることが必要になる。 社会の発展を実現させていくためには、社会システムを進化させる仕組み、社会風土を変容させていく仕組みが、儲かる仕組みとして成立しうるだけでなく、事業として持続的に成長し続け、社会に普及していく仕組みとしても確立されなければならない。そして、そこには、サプライチェーンにせよ、販売チャネルにせよ、関係する事業者がそのビジネスモデルに主体的に取り組んでいくだけの魅力がなければならない。 社会システムを進化させる仕組み、社会風土を変容させていく仕組み、事業として持続的に成長し続け、社会に普及していく仕組みは、新たな産業構造を花開かせる。この新たな産業構造は、社会の中に新たな生活環境を創造し、そのための基盤(プラットフォーム)となっていく。新たな事業は新たな産業構造を変革する基盤(プラットフォーム)の構築について考えなければならない。 インクリメンタルなイノベーションを続けているだけでは経済は次第に停滞する。経済の発展はディスラプティブなイノベーションによって実現され、新たな産業構造は経済発展の原動力となる。停滞した経済により悪化した財政を立て直すことができるのは増税ではなく経済成長である。負担感ばかりが大きくのしかかってくる増税は経済状況を悪化させるだけである。少子高齢化社会にあって社会保障費は増加するが、社会保障費の個人への負担を増やすことで財政負担を軽減しようとすると、人々の財布の紐は固くなり、経済状況は悪化してしまう。新たな産業構造を生み出していくことによってのみ、財政健全化と社会保障費の負担軽減を実現することが可能である。 国の政策、企業の事業計画は、未来における社会システムのビジョン、社会風土のビジョンを描いて、新たな産業構造の創出、新たな基盤(プラットフォーム)の構築、そのためのディスラプティブ・イノベーションを巻き興していく戦略思考が必要である。
【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)
- イノベーションは新たな産業構造を生み出し、新たな市場に新たな商品を供給していく。新たな産業構造が生み出され、新たな雇用が創出され、新たな経済成長を生み出していく。しかし、需要が満たされ、コモディティ化した商品に経済成長を牽引するだけの力を失っていく。一方、これまでの産業構造に一石を投じる技術革新が生まれることで、新たなイノベーションが巻き興されていく。
- この経済循環の中で国や地域の財政政策が展開されていく。経済成長期に作られた財政政策や社会保障制度は、経済衰退期における過剰な負担となり、財政破綻の要因となっていく。
- 経済成長は人口の増加によって支えられる。しかし、経済が成熟化すると社会も成熟化し人口の増大にもブレーキがかかる。人口増加が抑えられ、あるいは、人口減少化すると、経済成長の原動となる労働力も低下し経済の衰退へとつながっていく。人口減少は、すなわち、総人口に占める生産可能人口の割合の減少を意味し、社会保障費の負担が増していく。社会保障費の負担感が増していくことはまた、社会全体としての財政不安と将来不安を煽り、経済活動の停滞を引き起こしていく。
【未来における社会的価値の創造】
- 未来社会の発展を見据えた技術革新はイノベーションを巻き興し経済成長の原動力となっていく。ひとつのイノベーションは、新たな技術革新の種となり、更なるイノベーションと経済成長を生み出していく。
- イノベーションがイノベーションを生み出していく、先の先を読んだ技術革新の戦略展開により経済を安定して成長させていくことが可能となる。
- イノベーションは新たな産業構造を生み出し雇用を創出する。しかし、更なるイノベーションはそれまでの産業構造を破壊し雇用機会を奪っていく可能性をはらんでいる。経済成長のシナリオと同時に、産業構造の転換と雇用機会の移行を意図していかなければならない。
関連事項
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