“Well Being” を直訳すると「善き存在」となります。柔らかく表現するなら「より善く生きること」、ギリシア哲学の言葉を借りるなら「幸福である人生を送ること」と訳すこともできるでしょう [*1]~[*3]。 そこで、当社では、多義的になりますが、「善き存在」「より善く生きる」「幸福である人生を送ること」と定義しています。
“Well-being” は、当初、WHO憲章において「健康」の文脈で用いられていましたが、現在では「幸福」の文脈の中でも用いられるようになってきました。「健康」は、1947年に採択されたWHO憲章の前文において次のように定義されています。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」 [*4]
1.“Well-being” とは「働く」ことに意味を見いだして生きること。
人は何のために働いているのでしょうか?
人は誰しも、自分が叶えたい “Well-being” を実現するために働いていて、それは自分なりの生きる目的の実現でもあり、そこに働くことの意味を見いだして働いている。 [*5]
- 人は誰しも自分なりに叶えたい願いを抱いて生きている (生きる目的)
- 人は「働く」ことそのものに自分なりの生きる目的を重ねて働いている(働くことの意味)
- 生きる目的を成就することは自分なりの「善き存在となる」「より善く生きる」「幸福である人生を送る」を実現することでもある(“Well-being” を目指して働く)
もちろん、生活の糧(お金)を得るためだけに職を得て「働いている」という人がほとんどかも知れません。得た職で働くことと自分の生きる本来の目的は別にあるという人も多いでしょう。しかし、人は働かなければ自分の願いを叶えることはできません。「働く」ことに意味を見いだすことができるからこそ、人生の多くの時間をかけて人は働いているのです。
2.“Well-being” を実現するには、どのように働けばよいのか
人は「働く」ことに意味を見いだして働く存在です。
しかし、分業という仕組みの中に経営資源として投入されて定められた仕事をこなしさえすればよいという存在でもないし、機械の歯車として働く存在でもありません。誰もが「働く」ことに意味を見いだして働くことができてこそ、生産性が高まり、経済も成長し、社会も豊かになっていくのです。
- これからの分業は主体性のある自発的な協働の仕方として形づくられる
- 社会の中で自立した人たちが組織の中で自律して協働する
【参考文献】
- アリストテレス著, 高田三郎翻訳, 『ニコマコス倫理学〈上〉(下)』, 岩波文庫, 岩波書店, 1971-1973.
- アリストテレス『ニコマコス倫理学』を解読する:https://www.philosophyguides.org/decoding/decoding-of-aristoteles-ethica-nicomachea/
- プラトン著, 久保勉翻訳, 『饗宴』(改版), 岩波文庫, 岩波書店, 2008.
- WHO(世界保健機関) 健康の定義:https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/
- N.チェイター, 高橋達二,長谷川珈訳, 「心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学」, 講談社選書メチエ767, 講談社, 2022.7