目的思考 (初版)

 忙しい日々を過ごしていると、ついつい目的を見失ってしまいます。そして、様々な局面でものごとを合理的に判断しようとして、演繹的思考や帰納的思考に陥ってしまいがちです。しかも、ビジネスの世界では、常に結果が求められるため、まだるっこい話しはともかくとして、とにかく結論を示せと迫られることが多いというのが実態です。
 しかし、「経営において論理思考が正しく機能するための条件」でも記した様に、論理思考には、「問題に対する捉え方の範囲や前提条件の設定」に問題が内包されている可能性があります。日々の様々な局面において真に正しいと思っていても、実は、不十分な前提に立った論理思考に頼っていたばかりに、不備のある結論を出すことにもなってしまいます。さらに、組織において論理思考によって一つの方向が決まってしまうと、誰も責任を取りたくないから、組織全体として道を誤り続けて問題を深刻化させていくことになります。
 世の中が多様に変化し、常に様々な状況や利害が複雑に絡み合う中で、最も重視しなければならないことは「目的」です。錯綜する情報の海にあって、ぶれずにまっすぐ進んでいくためには「目的」が見えていなければならなりません。そして、その「目的」が実現されるために何が実現されていなければならないかを遡って考え、その遡っていく過程で、今ある状況との乖離を把握していくと、そこに問題の認識が生まれます。多様な状況にあっては「目的」から遡って考えるこの問題認識の過程が重要です。
 ここで、単に、現状と目的の間にあるギャップが問題であるというのではないということに注意しなければなりません。最も大事なことは、「目的」を「目の前に起きていることばかりに囚われて設定してはならない」という点です。そこでこの問題意識にある欠落を取り除いて問題をきちんと認識していくためには、①目の前で見えていることだけでなく、②誰もが知っている先人が構築した知識を踏まえた上で、③社会に対する大義という個々の殻を打ち破って、④もっと大局的に社会システムの有り様におけるあるべき理想と今の事実との間に生じている矛盾に思考を掘り下げて考えていくことが必要となります。