サステナブル経営に人工知能を活用する (1)

何故、経営に人工知能の技術を活用するのか

“勘と度胸”に頼れるほど、世の中は単純ではなく、激しい変化と競争の時代に、これまでの幸運がこれからも引き続き訪れてくるという保証は何処にもありません。

ところで、現代社会の世相がどんなものか、列挙してみると以下の様に要約することができるでしょう。

  1. 世界のどこかで起きたことも瞬時に地球全体を駆け巡る時代である
  2. 遠い場所の小さな出来事と思っていたことも、瞬く間に大きなうねりとなって世界中を覆い尽くしてしまう
  3. 国や地域の境界も、産業や業界の境界も薄れ、企業間の競争が一層激しさを増している
  4. 多様性が重視され、誰もが自分らしい個性ある生き方や暮らし方を追求していこうという時代である
  5. 誰もが、夫々の視点から、社会問題に関心を持ち、解決しなければと感じている

こうした世相が何を指し示しているかというと、今や、世界のどこかで起きたことも瞬時に地球全体を駆け巡る時代となり、また、国や地域の境界も、産業や業界の境界も薄れ、企業間の競争が一層激しさを増していく中で、遠い小さな出来事と思っていたことも、瞬く間に、大きな変化として世界中を覆い尽くしてしまう のだと言うことができるでしょう。

そこで、「何故、企業経営に人工知能の技術を活用するのか?」 に対して、以下の様に答えることができます。

  1. 世の中の変化のスピードが速ければ速いほど、変化を少しでも早く、兆しの段階から先取りして、あるいは、自ら変化を巻き起こして競争優位を確立し、他社が追いつく前に先行者メリットを獲得しなければ、投資を回収することはできません。
  2. 複雑に入り組んだ経営環境の下、膨大な情報が溢れる中で、スピーディーに山積する問題を解決していくためには、知恵(代替案)を創造する思考プロセス、代替案を評価し意思決定する思考プロセスに人工知能の技術を活用して、思考の効率化を図り、プレッシャーやストレスを低減していかなければなりません。

  3. 変化が激しければ激しいほど、その奥底に隠された変わることのない本質に訴求していくことの重要性が増していきます。個々の事象にばかり囚われて対症療法で対応していても、常に後手に回っているだけで、競争においても、後塵を拝してしまうことになります。
  4. 激変する社会にあって、情報の意味を読み解くための思考プロセスの仕組み、及び、適確な代替案を創造していくための、広く知識を探索できる、また、知識を結びつけて新たな知恵を生み出していくことのできるビジネス知識ベースの仕組みが必要です。

  5. 多様性と個性が重視される時代にあっては、社会の様々な人々の暮らし方に思いを巡らせて、顕在化した表面的なニーズの深層に隠された真のニーズを解き明かし、訴求していかなければなりません。ものごとを一面的に、顕在化していることを表面的に捉えていては、真に成すべきことを見誤ってしまいます。
  6. 社会に広がっている既成のブームやトレンドを追うのではなく、むしろ、将来に向けて新たなムーブメントやトレンドを創り出していける様に、多様な価値観をオープンに取り入れ、社会的な価値を創造し得るか透明性を持って評価して意思決定し、組織の生産性を高めていかなければなりません。

こうしたことを考えると、経営には、これまで以上に、多面的な視点での[状況の理解]、深遠で適確な(妙を得た)[施策の創造]、迷うことなく短時間に透明性のある結論を出す[意思決定]が同時に求められていると言うことができるのです。
 

どんな方向性で、経営に人工知能の技術を活用するのか

それでは、どんな方向性を持って、経営に人工知能の技術を活用すれば良いのでしょうか。そこで、この問いに答えるために、まずは、経営に人工知能の技術を活用する上での課題を、以下に深掘りして考えてみることにします。

  1. 企業経営に関する知恵は、言葉では表現しえない暗黙知だったりし、しかも、そこにこそ最も重要な知恵が隠されている場合が多いとも推測されます。
  2. 何を、どの様に、知識を定型化して学習できるようにしたら良いかを考えなければならない。多様性が重視される時代にあって、単一目的のゴールを設定して解を得る Deep Learning を適用するには、問題をかみ砕いて細かくする等の工夫が必要であると言えます。
  3. 人工知能(AI)を用いた場合、組織の中で、目的を民主的に共有すること、事実に対する意味を形成すること、[意思決定]のプロセスを透明化することは難しいと考えられます。

この結果を踏まえて考えると、経営に人工知能の技術を活用する方向性を見出すことができます。

全ての[思考]を機械に任せる(AI を活用して自動化する)のではなく、
  1.人間には限界のある多面的な視点での[状況の理解]
  2.深遠で適確な(妙を得た)[施策の創造]
  3.迷うことなく短時間に透明性のある結論を出す[意思決定]
のアシスタントとして、[思考]の助けになる程度の役割を果たしていく