ほとんどの企業では[事業部-部-課]の縦割り型の組織を採用し、業績もこの組織に紐づけて管理していることでしょう。しかし、顧客ニーズはこの縦割り組織を横断した商品やサービスを求めている場合が多く、この矛盾を乗り越えるために、各企業は、例えば、顧客案件に対応して組織横断のプロジェクトを立ち上げたり、内販制度(顧客とプライマリに契約した部門が、他の分担した部門に商品売上や投入した工数分の売上を支払う制度)を採用して部門横断で協働したりといった工夫をして対応しなければなりません。
組織のダイナミズムの問題として見るなら、こうした組織の壁を越えた処理をしなければならない状況が生じてくること自体が、そもそもの問題として、旧来の縦割り組織に縛られた組織編制に対する考え方が現実のビジネスにそぐわなくなってきていることの現れと言えます。
業務品質の向上やコンプライアンスの厳格化を図っていくためには、業務プロセスの標準化、および、様々なチェックの仕組みや監査証跡をとる仕掛けも必要になってきます。組織の中で働く一人ひとりの業務のコンピュータ処理化が進展して定型業務が軽減されつつも、業務プロセスの手続き(手続きの形式化、固定化)が厳格化していくことで、作業を進めるための作業(オーバヘッド)が無視できなくなります。
例えば、こうした現場環境においては、顧客の要求等に柔軟に対応しようとしても、規定のプロセスを越えた例外処理の申請・承認が形式的に求められることになります。そして、そうした例外処理が常態化し、さらに、ビジネススピードが加速されてくると、期日に間に合わせるために、長時間残業をして増大する作業量をこなしていかざるを得なくなります。
承認プロセス自体の負荷も大きくなり、承認待ちも発生します。そしてそれがサービス提供の場合は、カットオーバーの時期の遅延を引き起こし、最後に納期に間に合わせるためのつじつま合わせが現場作業に降りかかってくることになります。
この様に、規定された業務プロセスと現実のビジネスとの間の乖離が、現場作業を圧迫することにつながっていきます。そしてこの乖離が経営をも圧迫する様になって、ようやく業務プロセスの規定そのものを見直してコンピュータで処理する流れを再構築しようということになります。当然のことながら、この再構築には新たな投資が必要となりますが、システム開発費を抑制しようとして運用でカバーするとなると、結局、それが現場部門の処理として残り、新たな負荷となって跳ね返ってくることにもなります。
業務プロセスに制約されるこれらの問題はすべて、社内制度に起因する問題であり、個々の事業部門の中では解決することはできません。それを個々の事業部門の頑張りによって解決しようとしても、組織全体としての生産性の向上にはつながっていきません。それどころか、現場は疲弊し、経営と現場の間の溝も深まり組織のダイナミズムは低下してしまいます。
解決方法とその限界
業務の範囲が多岐に広がり大規模になる一方で、品質の向上やコンプライアンスのために、業務プロセスは標準化され、かつ、厳格化されていきます。この結果、現場は、顧客要件に柔軟に対応しようとしても、社内プロセスに縛られ、多くの時間を割かれてしまうことになります。こうした状況は、長時間残業が問題視される中で、速やかに改善されるべき問題です。現場での柔軟な運用で対処できると判断されるかも知れませんが、それは現場作業のオーバヘッドであり、煩雑化する社内手続きを繰り返し行う無駄を放置するのは、明らかに時代に逆行しています。
企業が競争力を強化していくためには、社内規定に沿いつつも、組織で働く一人ひとりにとって負担となる過剰な手間を機械化するなどをして作業量の低減を図り、業務が滞りなくこなせるように業務プロセスを改善ことが是非もなく必要です。
また、そもそも、縦割りの組織編制が問題の原因になることもあります。縦型の組織編制に基づく諸制度を見直し、商品やサービスを横断した組織編制を取り入れることで、こうした手間の軽減を図ることもできます。縦割りの組織の壁に固執せず、個々の組織の利害関係を超越して、すぐさま見直すことを考えるべきです。
さらに、これらの施策は、単に運用プロセスや組織編制の変更で済ませるのではなく、人事制度にも言及し、報酬制度として外発的に動機づけしていくことも考えていかなければ、組織内で浸透していきません。部門業績の捉え方を見直し、かつ、担当者の処遇を縦型組織と組織横断の活動に即した貢献度で評価できるように改善し、様々なプロジェクトに関わり貢献することで高く評価されるように、報酬制度を見直すことが必要です。
このレベルでの問題解決の目的は、経営環境の変化に即した制度となるように改善し、その制度の下での業務効率の最大化を図り、競争優位性のある価値の提供を可能にならしめることにあります。しかし、問題の制度による解決は、組織のクリエイティビティを向上させイノベーションを巻き興させることにはつながりません。なぜなら、イノベーションにより社会制度が進歩し、社会的風土が変容したその先に、制度化がそうした変化を定着させていくことになるからです。
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