ワークライフ・バランスとワークライフ・サステナビリティ
高度経済成長期において長時間残業、休日出勤が当たり前だった日本人は働き過ぎと揶揄されてきました。しかし、過剰な労働による健康被害が問題視されるようになり、また、少子化による人口減少社会化が問題となり労働と家庭生活、とりわけ、子育ての時間を確保するべきだという意識が社会に浸透した結果、現在では、日本の社会の中でも「ワークライフ・バランス」という言葉が定着してきています。労働と生活を両立させた働き方が「ワークライフ・バランス」と言えます。
ワークライフ・サステナビリティとは
しかし、「ワークライフ・バランス」を実現するには、作業効率を高めて残業や休日出勤を抑えつつ同程度のアウトプットが求められ、労働生産性の向上が強く求められるという意味合いも含まれます。元々日本人には「生活残業」という意識が根深くあり、残業規制で手取りが減らされ、かつ、効率化のために精神的にも肉体的にもとことん労力を搾り取られるというのでは、その労働は苦役にしかなりません。
そうではなく、働くことが「働きがいのある人間らしい仕事」をするということとなり、また、仕事そのものが「自分の生きる目的であるもの」と重ねることができるように個々人の思いに沿ってデザインされることが必要となります。「ワークライフ・サステナビリティ」とはそのようにデザインされた仕事のできる働き方を意味します。
サステナブル・ライフスタイル、サステナブル・ワークスタイル
「ワークライフ・サステナビリティ」には「サステナブル・ライフスタイル」と「サステナブル・ワークスタイル」が暗黙的に内包されています。そこで、「サステナブル・ライフスタイル」と「サステナブル・ワークスタイル」を個々に定義することが必要となります。
「サステナブル・ライフスタイル」「サステナブル・ワークスタイル」という言葉を文字通り解釈するならば、地球温暖化問題や自然環境の破壊問題に対して環境負荷に配慮した暮らし方や働き方をしている、あるいは、そうした問題を解決する製品を開発するとか社会貢献活動に取り組んでいるといったことと受け止めることができるでしょう。また、貧困や差別といった人権問題に配慮した暮らし方や働き方に取り組んでいるといったことも想起されるでしょう。しかし、それは、サステナブル・ライフスタイル、サステナブル・ワークスタイルの直接的な意味、表面的な意味でしかありません。
サステナブル・ライフスタイルとサステナブル・ワークスタイルの真の意味
経済が成長し成熟期にある今日の社会にあって、家の中には、大抵の欲しいモノがゆきわたっています。 そして、今、私達は暮らしに質の高さを求めるようになってきました。 しかし、裕福に暮らす人達がいるその一方で、経済格差が顕著となり日々生きていくのに苦しんでいる人達も多くいます。 どんなに働いても一向に暮らしが楽にならないし、未来への夢も持てない、老後の生活も不安だと実感している人も多いのではないでしょうか。
私達は、一人では生きていけません。 多くの人に支えられ、また、他の人の力になりながら生きています。 豊かな人間関係が、心豊かな暮らしを支えているとも言えるでしょう。 高度経済成長期のように、自分の日々の暮らしを犠牲にしてがむしゃらに働くのではなく、自分らしい生き方を見つけて、自分らしい生き方を築き上げていく、そんな生き方を多くの人達は望んでいるのではないでしょうか。
自分のアイデンティティを大切にし、周りの人達のアイデンティティを尊重し、価値観の合う人達との関係性を深めていくことも大切でしょう。 そして、そうした生き方や関係性は、コチコチに固定されたものではなく、社会の変化や周りの人達との関係性に影響され、影響し合いながら、心をときめかせ、過去から今、今から将来へと深化しながら広がり、浸透し、発展していくものだと思います。
サステナブル は、過去の、そして今の、固定的なものやことに固執し、将来においても維持し継続させていくという意味ではありません。 むしろ、そこには、しなやかに変化しながら将来に向けて発展し成長していこうといった意味合いが強く含まれています。 それは、大衆の平均的な姿に固定的に築かれた観念上のことではなく、生きている一人ひとりのライフスタイル、ワークスタイルへの想いや将来への夢が満たされていかなければなりません。 それこそが サステナブル の本質的な意味であり、サステナブル・ライフスタイルとサステナブル・ワークスタイル の真のあり方なのです。