イノベーションは新結合による変革であり、その普及と新たな変革が創造的破壊をともない不連続に発現することにより社会が発展し経済が成長していくという経済理論です。イノベーションがイノベーションを生み出す好循環の社会づくりを意図していかなければ持続した経済成長を実現していくことはできません。
イノベーションが上図の循環的プロセスに沿って新たなイノベーションを巻き興して社会を発展させていくという好循環による経済成長が イノベーショナル・エコノミー です。
イノベーションへの道筋
イノベーションは技術革新であるばかりではなく、社会発展という社会現象でもあります。当然のことながら、技術革新が実現する未来の社会像を無視して未来社会における価値を描くことはできません。しかし、イノベーションは、[イノベーション=技術革新が実現する未来の社会像+α]という関係式で考えるべきです。
この “+α” は、経済成長の理論としての主目的である[経済成長]という側面、および、[社会発展][社会問題の解決][組織・人の成長]といった非経済的側面を加味しなければならないということを示したものです。
そして、イノベーションの目的を実現していく[社会システム][社会的風土][プラットフォーム][プロダクト]のすべての思考過程において、この[技術革新が実現する未来の社会像][社会発展][経済成長][社会問題の解決][組織・人の成長]という側面が一貫して考え抜かれていかなければなりません。
逆転の発想
技術革新が実現する未来社会における価値、社会発展、経済成長、社会問題の解決、組織・人の成長の間にはコンフリクトが生じることがあります。たとえば、社会問題の解決にはコストがかかりますが、それが経済成長の足枷になります。経済が成長すれば社会も発展するとは限りません。急激な過度の経済成長は社会の歪を生み出します。そもそも、経済的な豊かさ、すなわち、ものが豊かにある裕福さと心豊かさとは別格のものです。
目的思考の前提となる目的自体も成長していくものであると言えます。現時点では正しいと思われることも、未来においてはあまりにも稚拙であると否定されることを想定しておくべきかも知れません。現時点で正しいと思える目的を否定し(アンチテーゼ)、その先にある目的(抽象化された未来社会における価値)を描くことは、さらに進歩した未来社会における価値の創造につながっていきます。イノベーションを意図して巻き興していくには、常に、その先に進歩していく目的(ジンテーゼ)を見つけ出していかなければなりません。
目の前のこと、知識、自分の中で無意識にはめた枠を否定しながら抱え込み(アンチテーゼ)、未来社会の価値(ジンテーゼ)を創造していく弁証法的思考過程は、言わば “逆転の発想” でもあります。イノベーショナル・エコノミーは、逆転の発想によって実現されていくと考えるべきです。