「サステナブル(持続可能な :“Sustainable” )」 に視座した企業経営は、これまでの経済性や利便性の発想で考えてきたマネジメントの仕組みを漫然と続けていても実現することはできません。
どの様な視点でものごとを捉えなければならないか、どんな段階を経て実現していくかを整理して、マネジメントの仕組みを再構築しなければなりません。それがここで示す企業経営のデザインコンセプト(設計思想)です。
どの様な視点でものごとを捉えなければならないか
当社では、まず、「企業の特長を生かした社会の持続可能な発展へとつながる大局的な戦略構想」として、社会の持続可能な発展を実現していく上での活動テーマを6つに分類しています。これらは個々に展開していくというよりは、相互に補完し合い相乗しながら掘り下げて深化させていかなければならないものです。
- 再生可能性 (温暖化、食料危機、自然環境の破壊等への取り組み)
- 多様性(生態系、社会、雇用等の多様性への取り組み、ユニバーサルデザイン等)
- 共生(自然環境、地域社会との共生等)
- 内発的動機づけと自律行動(決められた目標に対する成果と報酬ではなく)
- 結い(お互い様の心遣いで結びついていく)
- 創発(トップダウンではなく、誰かでなく、誰もが)
どんな段階を経て実現していくか
次に、企業が持続可能な成長をステージアップしていく過程についてですが、以下の3段階に大きく分けて考えると理解しやすくなります。
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[ステージ1] モノの充足 (目に見えるモノ)
[ステージ2] 顕在化している社会問題を解決するというニーズに着目して、新たな市場を生み出す
[ステージ3] その先を観て、コトを創造する
[ステージ1]
モノのない時代の段階であり、大量生産・大量販売・大量消費で企業の持続可能な成長を牽引していこうという発想です。よく言われるプロダクト・ライフサイクルで考えますと、導入・成長期には上手く機能するこの発想も、成熟期になると市場争奪の競争が激しくなり価格競争の結果として企業の体力は奪われていってしまいます。
[ステージ2]
成長経済の下で生じてくる様々な社会問題を解決することで優位性を発揮していく段階です(例えば、自然環境の破壊や温暖化問題への対応等)。企業ブランドとしての訴求力を高め、その企業の特長を生かした新たな発想で顧客の共感を呼び込み、そうした顧客層で形成される市場の需要を取り込んでいきます。
[ステージ3]
マクロに見た市場という発想ではなく、顧客の状況や個性をもっと細かく見つめていきます。目の前にいる個人、更には、その周りの人達との関係性、そうした個人や周りの人達の今だけでなく将来も含めて、ライフスタイルを創造し、コミュニティ(人と人との触れ合いの場)を創造し、そこで満たされるシーンをクリエイトしていく段階です。ステージ1におけるモノの充足とは全く異なり、そこにはコト(日々の出来事、カレンダライズされた年間の行事、人の成長過程や様々な人生の節目の中で行われるライフイベント)が繰り広げられ、物語としてのストーリー性が重視され、そうしたコトを通して、社会に生きる一人ひとりの心豊かな暮らしが創造されていきます。
今の、そしてこれからの社会から求められていることは、まさに、[ステージ3]です。そこでのニーズは無限とも言える広がり、深さのバリエーションがあり、ステレオタイプに捉えた教科書知識の習得でカバーできるものではありません。[ステージ3]の段階へステップアップしていくためには、色々なコトに当意即妙に対応していくことのできる、しなやかさを持った能力を組織の中で培っていかなければなりません。そのためには、組織で学習する能力そのものを企業の中に埋め込んでいくことが必要となってきます。